
不埒に淫らで背徳な恋
第2章 【秘密を共有するのは罪ですか?】
「やだよ……私なんか弱くて、周りに良い顔ばっかして…」
「何があっても僕は変わりません……チーフを諦めたりしない……チーフが僕を捨てない限り僕から離れたり嫌いになったりしません」
私は……彼にここまで言わせてしまうの?
自然に溢れ出る涙。
彼のお腹に落ちていく。
「私ズルいよ……弱くて…佐野くんが思ってるようなデキた人間じゃない…!」
「だから好きなんです……僕がこれからは怒ったり…泣いたり叫んだり、全部さらけ出せる場所になります」
「私……佐野くんを利用しちゃうかも知れないんだよ?」
「受け止めます…全部。僕じゃダメですか…?僕はチーフじゃなきゃダメなんです」
左右それぞれ濡れた目尻にキスしてくる。
頬を包む手が温かい。
指で唇をなぞられ見つめ合った。
この視線から逃れられるのだろうか。
胸の奥がキュン…となって身体が疼き出す。
「僕を選んでください」
道徳とか不道徳とか…もうどうでもいい。
今目の前に居る彼が欲しい。
地獄に落ちたって構わない。
何もかも誤った判断はこの媚薬のせいだ。
甘い香りに導かれて毒を盛られる。
それが毒だとわかっていてもきっと口にするの。
けど後悔はしない。
何度でも私は彼に惹かれてしまうのだろう。
今も抵抗なく激しく絡ませているように。
壊れた理性に抗えない。
もう戻れない。
電源をつけた携帯には着信が20件入っていた。
全て稜ちゃんから。
LINEも数件。
既読しなくても謝罪文だということはわかっている。
早朝の会議室。
タオルケットにくるまって朝を迎えた。
ロッカーに行って着替えを済ませ、給湯室で歯磨きセットを手に同時進行でメイクも直す。
鏡に映る自分を見て、改めて昨夜の出来事がリアルに思えてくる。
昨日の自分は…本当に今の自分なの?
少しだけ冷静になったらとんでもないことをしてしまったんだって後悔の念が押し寄せてくる。
朝方まで一緒に居た。
抱きしめ合ってソファーで眠ったはずなんだけど目が覚めたら彼は居なくて。
一瞬、本気で夢だったのかと思った。
