不埒に淫らで背徳な恋
第4章 【許されぬ略奪でしょうか?】
「瑠香、どっちが良いと思う?」
「うーん、こっちかな」
「絶対そう言うと思った」
「じゃあ聞く必要ないじゃん」
「瑠香に選んで欲しいんだもん」
休日の昼下がり。
稜ちゃんと二人で訪れた大型ショッピングセンター。
よく買う古着屋さんでいくつか服を選んでいた。
「え、買わないの?」
「次のところ見てから決める」
「ふーん」
衝動買いしないところが偉いなって思ってた。
そういう価値観はずっと同じだよね。
移動する短い距離でも普通に手を繫ぐようになった。
人混みっていうのもあるけど、最近の稜ちゃんは優しくて困る。
「疲れてない?」って聞いてくる横顔も「これ瑠香に似合いそう」って私に気遣うところも全部チクチクする。
休日ともありファミリー層も多い。
お父さんに肩車されてる子供や、両親と仲良く手を繋いで歩く子供の姿を見るとつい稜ちゃんがどんな顔してるのか見てしまう。
目を細めて優しく微笑んでたりすると、やっぱり欲しいんだなって気付いちゃうし、互いの心のズレを目の当たりにする。
さすがにもう言葉にして言ってはこないけど本音は違うってわかってた。
でも次言ったら私が離れてくって思ってるだろうから苦しいよね。
私が居ればそれだけで……って本気じゃないでしょ?
無理に笑ってることくらいお見通しなんだよ?
縛りつけている気がしてもう離れたいと思うのは勝手だよね。
稜ちゃんの本音、怖くて聞けないのは私の方だ。
「瑠香のもちょうだい」とフードコートで買ったミックスジュースをベンチに座って飲んでいたら交換された。
バナナジュースを選んだ稜ちゃんは
「俺もスタンダードなやつ頼めば良かった」と後悔している。
「じゃ、交換してあげるよ」
飲んでたカップを入れ替えたら遠慮してきたけど私はバナナジュースでも全然良いの。
ていうか何でもいい。
早く時間が過ぎればいいって思ってる。
ごめんね?
笑顔の裏で酷いよね。
髪を撫でたり口元拭いてあげたり
幸せそうな顔して波長を合わせているけど、私にとってこれは仮面夫婦だ。
嘘の姿なんだ。