不埒に淫らで背徳な恋
第1章 【心の歪み、気付いてる?】
あ、そうだ。
今日から新入社員が来るんだった。
全員集められて紹介を受ける。
初対面だった彼は誰もが認めるイケメンでサラサラの前髪と漆黒の瞳。
筋の通った鼻に艶のある唇。
緊張してるのか頬がやや赤く染まってる。
「本日からお世話になります、営業で入りました佐野 快です。宜しくお願いします」
全員一同拍手で迎え入れると早速目が合った。
何か……誰かに似てるなぁ……
どこかで見たことあるような感じ?
何だろ?
うーん……韓国のアイドルに居そうな感じ?
「チーフの畠中です」
教育係として自己紹介したけどずっとこっち見たまま固まってる様子で、部長も早速フォローする。
「佐野くん?わからないことがあれば彼女に聞くといいよ、直属の上司の畠中くんだ」
「は、はい…!宜しくお願いします!」
だ、大丈夫か!?
初日から何かやらかしそうな予感しかない。
うぅ……めっちゃキラキラした目で見てくる。
若いって良いな。
一通り教えてわかったこと。
抜けてるように見えてちゃんと理解してくれてる。
人一倍気を遣って丁寧に教えるけど、どうやら即戦力になる日は近いかもね。
「畠中チーフの教え方、とってもわかりやすいです。僕ももっとExcel勉強しなきゃなって思いました」
お、勉強熱心。
そうきたら世話好き衝動が働いてしまう私。
何冊か持ってる本を貸してあげた。
本気で喜んでくれてるから更に高ぶる。
「去年出たやつだから割と新しいよ、私はわかりやすかったから」
「今日退社したら本当に買いに行こうと思ってました、嬉しいです、ありがとうございます」
「返却はいつでも良いよ、何なら借りパクでも」
「いえ、そんな…借りパクだなんて」
「面白そうなのあったらすぐ買っちゃうからさ、家の中も本だらけなの」
「うわ、見てみたい……僕も本好きですけど、もっぱら漫画なんで」
「何で?漫画、良いじゃん。人生で漫画は必要だと思うよ?娯楽に無駄なものはない…!」
「プハっ…!初めてです、そんなふうに言われたの」
あ、やっぱり笑うと可愛いんだ、この子。
きっとこれからは皆の癒やし系になりそう。
自然とこっちも笑顔になっちゃう。