不埒に淫らで背徳な恋
第1章 【心の歪み、気付いてる?】
「よし、仕事しよっか」
「はい…!」
その一言でキリッと表情も変わる。
上手く自分で切り替えれてるんだな。
真面目な顔も、今みたく笑った顔もどっちもキラキラしてる。
私も見習わなきゃなって思わせてもらってるよ。
こうして新しい人が入ることでまた違った風が吹く。
そういう環境も割と好き。
ていうか、私は人が好きなんだと思う。
「たーなーかー!この前言ってたプレゼンの資料出来たの?コンビニコスメの日焼け止め」
後ろからパソコンを覗き込むもやってる形跡はなし。
ちょっと抜けてる彼はこうして時々お尻叩いてあげなきゃならない2年目くん。
「はい、すみません!あと少しで修正終わります」
「遅いよ、午前中にはメールしてね」
「はい!」
「あと、田中くん……机の上、汚い」
「え?あ、はい、すみません」
周りからクスクス笑い声が聞こえてくる。
慌てて散らかってるペンや付箋を片付けてるけど、このやり取りは私と田中くんだけのいわゆるコミニケーションの1つでもあるのだ。
厳しく注意した後での笑顔って一番適したフォローだと思ってる。
怒ってないの、言われることで言われる前に行動出来るようになってもらいたいし、そう仕向けてるの。
私だけじゃなく、他の上司にもそうあって欲しいから。
あと、整理整頓出来ない人は頭の中もイコールしてる。
どこに何があるのか常に把握していないとどの作業にも影響するんだよって何度言ってるか。
「本当、チーフ居なかったらどうなっていたか…」
よくそんなことを耳にするけど、
大したことはしていない。
大丈夫、私じゃなくて頑張ったのはキミだから自信持ちな?って背中押してあげるの好きなだけ。
そのうち講師でもしようかしら?なんてね。
「畠中くん、その…産休とか考えてる?そろそろなのかな?」
部長までこの始末。
セクハラですよ?と言ってやろうか。
急に辞めないでね、とかモジモジしながら言うのやめてもらっていいですか?
これでも尊敬してるから可愛く見えちゃう私もどうかしてるけど。
結婚して3年目。
普通ならそろそろ…なんだろうね。
年齢的にも適齢期なのかな。
でも私はそんな言葉を一蹴する。