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不純異性交際(下) ―それぞれの未来―

第32章 たからもの


クリスマスくらいしか使わないような細いグラスにそれぞれ好みのドリンクを用意して、チン、と乾杯した。


「そういえば今年もお姉さんは夜勤?」


「いや、今年は休み取れたって、彼氏と過ごしてるよ」


「あぁ、薬剤師のね~!」
恭ちゃんにチキンを取り分けながら奈美が言った。


「お姉さん、あれからどうなったの?結婚とか」


「ん~。分かんない。でも家は出ようと思っててさ。来年にでも」


「それじゃ、いよいよ独立?」


私が言うと、奈美は首をかしげた。


「あ、奈美にはまだ言ってなかったっけ?自宅で開業しようと思ってんの。まだ先だけどね(笑)」


「そうなのぉ~?!すごいねぇ紗奈!そっか、資格あるもんね」


「まだ全然分かんないよぉ~?引越すって言っても、近くだしね」





おしゃべりをしているうちにいっちゃんがぐずり始め、紗奈は寝かしつけるためいったん廊下に出ていった。



「ね、最近ミノルくんとは会ってるの?」


何気なく聞くと、奈美はうなずく。


「うん…たまにね?でもなにもないよ。普通に子供たちとみんなで遊ぶだけ」


「そっかぁ…」


「私…やっぱり旦那との関係修復?っていうか…もう一度立て直したいと思ってる。今はこんなだけど…」


「…うん。奈美がそう決めたなら応援する。奈美らしい答えだと思うよ」


「おかしな話だけどね、私…、ミノルと何もなくて良かったって今は思ってるんだ。あのとき、もし…一線を超えてたら、溺れちゃってたかも。」


「ふふっ…。私みたいに?」


「んもう、そんな事は言ってないよぉ」





いっちゃんを寝かせた紗奈がやっと帰ってくると、また3人で女同士の話に花を咲かせた。


「もうすぐ忘年会じゃん。ミライ行くんでしょ?」


「うん、アンナも来るよ」


「アンナ、彼氏と別れたんでしょう?大丈夫そうなの?」




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