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不純異性交際(下) ―それぞれの未来―

第32章 たからもの


「もうすぐ今年も終わりだね…--」


夜も更け、リビングに布団を敷いてみんなで横になると、なんだか懐かしさが蘇る。


「昔は、バラ組みんなでこうやって雑魚寝したよね(笑)」


「したした(笑)起きるとだいたい、ケイの向きが逆さまなんだよね~~」


「アハハッ!!懐かしい~~(笑)」


「アンナの寝言も笑ったよね」


「あー!前髪切りすぎちゃった~~ってやつね(笑)」



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私たちは出逢って15年以上経つ今でも、こうして肩を並べる。


結婚しても、失恋しても、子供が生まれても、いつも近くにいる。


この安心感は、何物にも代えられない…


胸を張って”たからもの”だと言える、唯一の存在かもしれない。


幸せなクリスマスの夜、私は奈美と紗奈に挟まれて眠りについた。



…-----




12月も後半に差し掛かり、忘年会の日がやってきた。


アップルに到着すると、すでにアンナが待っている。


「お待たせ!」


「私もいま来たとこだよぉ!何飲む?」


2人で紅茶を注文すると、やがてマスターがお盆に載せたティーセットを持って現れた。







「今日は海鮮のお店らしいよね」


「そうだったね。日本酒かな~♪あ、アンナはテキーラか(笑)」


「ちょっとぉ~!私のイメージ、テキーラにしないでよね(笑)」


「ふふっ(笑)それにしても、今日は30人以上来るらしいから平野も大変だねぇ」


「いいんだよ、やつは幹事が好きなんだからっ!」



やがて時間が近づくと、私とアンナはアップルをあとにした。


ビュウッと冷たい風が吹き、アンナは私の腕を掴む。


「うぅう~!さむっ!」


バラ組の5人は皆性格も見事にバラバラだけれど、中でも
アンナは昔から人懐っこい子だった。


あの頃もこうして腕を組んで、廊下を歩いたっけ…。


なんだか嬉しくなり、笑みがこぼれる。


「え?どしたの?なに笑ってるのお~~!」


「ふふっ。懐かしいなって、ね」


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