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不純異性交際(下) ―それぞれの未来―

第33章 大人になれない


しんと静まったあとで、瀬川くんが口を開いた。


「あれ、大学の同期。昔からあんな感じで……」


「…うん」


「…嫌な思いさせてごめん。」


「ううん…。私こそ、いい歳してこんな…子供みたいね。ごめん…」


「正直さ、…俺こそいい歳してカッコ悪いかもしれないけど」


「うん?」


「俺、…おまえを失うのが今一番怖い。一番大事な存在。」


「ん…」


「だから、誰かのそばで泣かないでほしい。嫌だった事どんどん俺に言って、…泣くなら俺の隣で泣いて」


「うん…」



瀬川くんの匂いに包まれ、気持ちが落ち着く。


彼はいつものように私の頬を撫で、優しく口づけた。



「…やきもち妬いちゃったの。あんまり仲が良さそうで」


「うん…ごめん。もっと早く拒否するべきだった……後悔してる。」


「瀬川くんが悪いわけじゃないの。ほんとに…」


「あいつにも言った。あんまり馴れ馴れしくすんなって」



「…」



「…好きだよ。」


「ん…」


「愛してる。お前以外マジで興味ない。」



再び強く抱き寄せられると、私はずるずると鼻をすすった。


「私だって、そうだよぉ…」


「うん……。仲直りしてくれるか?」



喧嘩していたわけでも、瀬川くんが悪いわけでもないのに、そう言ってくれる彼が愛おしい。



両手を彼の首にまわし、苦しいほどに抱きしめた。


あまりにも強い力が可笑しくて、どちらからともなく笑った。



「ふふっ…」
「へへへ…」



すっかり和やかな空気に変わった頃、店の扉がゆっくり、少しだけ開いた。


隙間から「あの~!」と声がして、アンナがきょろりとこちらを見た。



「あっ…」


私は急いで瀬川くんから腕を解く。


「んも~~!心配してたのに全然ラブラブじゃん!」


「ごめんね、すぐ戻るつもりだったんだよ」


「いいよっ。喧嘩してなくてよかった!さ、中戻ろう?寒いし~~!」



3人で店内に戻ると、平野も扉のそばまで来ているところだった。


「アンナちゃん、邪魔しちゃダメって言ったでしょ~?!」


「だぁって、遅いんだもん!心配になるじゃんか~!」


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