
不純異性交際(下) ―それぞれの未来―
第33章 大人になれない
店の引き戸を開け、外に出ると年末の空気で頬が冷やされる。
すぐ目の前にあった階段に腰をおろし、目頭に少しだけあふれた涙をぬぐった。
情けない…。
どうしてこんなに気にしてしまうんだろう。
自分の独占欲や嫉妬心が怖い。
5分もしないうちに店の扉が開き、平野がやってきた。
「だいじょぶ?とりあえずアンナちゃんをトイレに行かせたよ(笑)」
元気づけるように明るい語尾で話しかけられ、私はさらに自分が情けなくなった。
「ごめん、ありがとぅ…」
「いや。全然。」
私より一段上の階段に腰を下ろしながら、平野が事も無げに言う。
「恋愛ってさ…ほんと、めんどくさいよな」
「ふふっ、なに、いきなり」
「へへっ。なんとなくだけど。」
「平野さ、最近すごいアンナと仲が良いみたいね。本当に友達ってだけ?」
いじわるな質問に、平野は意外と真面目な口調で答えた。
「うーん…。どうなんだろね。付き合うって、なんだろうね」
「…」
「…」
「私にも…分かんないかも」
長い沈黙の後で答えると、平野は少し笑った。
「瀬川のこと心配?」
「…。んー…」
「まぁ…あの女の子は確かに積極的な子かもしれないけどさ、瀬川は…ミライちゃんを悲しませないと思うよ。これマジ」
「うん…疑ってるわけじゃないの」
分かってはいても、良からぬ妄想でまた涙が溢れそうになる。
「ミライちゃん。……泣かないで。アンナちゃんも心配する…」
「…うん…」
服の袖で涙をぬぐった瞬間、店の扉が勢いよく開いた。
少しばかり息が上がっているように見える瀬川くんが私を確認すると、駆け足で寄ってきた。
平野の目を気にすることなく私を強く抱きしめると、「ごめん」とハッキリ口にした。
「じゃ俺は、アンナちゃんの様子みてくるね~」
小声で言うと、平野は店の中へ戻っていった。
