
不純異性交際(下) ―それぞれの未来―
第34章 付き合うことの意味
「おう。さっき言ってた彼女って、この子」
彼は私の髪を優しくポンポンしながら言った。
山下さんは少し戸惑ったあと、
「そ、そうなんだぁ~!へぇ~!良かったねナオト~!」
と言うと私に流し目を送り、そそくさと去っていった。
「なあに、あれ。やなかんじぃ~~!!」
アンナの声はおそらく山下さんにも聞こえていた。
「ちょっと、アンナちゃん!酔ってるでしょ!?だめだよ、喧嘩売っちゃあ…」
「酔ってたって酔ってなくたって、いやな感じなのは変わらんだろお~!!!」
「あぁ、分かった、分かったから一回おちょこ放して(笑)」
平野とアンナの漫才のような会話に瀬川くんは大きく笑った。
「なんかごめんね…」
小声で言うと、「なんでお前が謝るの?」と瀬川くんはまた、私の腰を引き寄せた。
手のぬくもりが、私の心を潤わせる。
…
それから、二次会には行かず2人で帰路についた。
獣のように激しく、何度も愛し合ったことは…私たち以外、誰も知らない。
…
年末、大晦日を私のアパートで過ごしていた。
気合を入れすぎた沢山のお料理は2人には多かったけれど、それでも瀬川くんは元旦にかけて、結局ほとんど残さず食べた。
「こりゃ、正月太り待ったなしだわ(笑)」
「ふふっ。いっぱい食べてくれて嬉しい」
テレビ番組はどれもめでたいムードの中、私たちは初詣のために支度を始めた。
「混みそうだから、電車で行こっか」
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しかし、大きな神社の最寄り駅に近づくにつれ、電車内はぎゅうぎゅうと混み合う。
瀬川くんに守られながら、なんとか電車を降りる。
「あ、いた。」
彼は奇跡的にも少し遠くにアンナと平野を見つけた。
「えっどこどこ?!」
「お前には見えない気がする(笑)」
「チビだから…?」
「…うん(笑)」
「んもぉ!」
じゃれ合いながらも足を進めると、私にも2人の頭が見えてきた。
なんの気なしで近づいたが、2人の後ろまで来ると私たちは躊躇した。
アンナと平野が手をつないでいたから…。
