
不純異性交際(下) ―それぞれの未来―
第35章 失って気付くもの
目に涙をためて固まる綾香ちゃんは、今にも壊れてしまいそうなか弱さを醸し出す。
「綾香ちゃん…ッ…」
どうにも出来ず、3人でその場に立ち尽くしていると後ろから平野と瀬川くんもやってきた。
「どうした?」
瀬川くんは優しく言い、私のそばに寄った。
「コウヘイくんが……」
その言葉で、平野と瀬川くんはコウヘイくんの存在を確認し、それから泣きそうな綾香ちゃんの状況を把握した。
「うわっマジか…」
平野が言うと、アンナが背中をばしばし叩く。
「ちょっと、ビシッと言ってきてよ!」
「で、でも…」
綾香ちゃんとコウヘイくんは付き合っているわけでもなく、なんとも叱り文句が浮かばない。
私は綾香ちゃんの背中をさすり、コウヘイくんは私たちの存在に気付かずイチャイチャしている。
見兼ねたアンナがここから大きな声を出した。
「コウヘイく~ん?なんで新年会こなかったの~お??」
コウヘイくんは一瞬キョロキョロしたあとで、私たちに気が付いた。
見たことのない、かなり焦った表情でこちらへ向かってくる。
綾香ちゃんが出口へと駆け出し、私とアンナも追いかけた。
「2人とも…ごめんね、せっかくの新年会なのに。私が泣くから…」
エレベーターの中で、綾香ちゃんは鼻をすする。
「謝ることないって!!」
「でも、付き合ってもないから…」
「だけど…あんなの見たら嫌だよ普通。泣きたくもなるよ…」
私が言うと、綾香ちゃんはまたうつむいた。
「分かってるの。彼女でもないんだから、何も言う権利ないし…勝手にショック受けてるだけ。すぐ元気になるね♪」
鼻を赤くして無理に笑顔を作る綾香ちゃんが痛々しい。
1階につくと男たちが階段で降りてきた。
コウヘイくんも一緒だ。
「綾香ちゃん!あけましておめでとっ」
めずらしくコウヘイくんの方からスキンシップをはかるも、綾香ちゃんはいつもとは違った。
「………おめでとう…」
一瞬コウヘイくんの顔を見ただけで、すぐに目をそらし歩き出してしまった。
「ねぇ、綾香ちゃん!」
コウヘイくんが呼びかけると彼女は再び振り向いた。
