
不純異性交際(下) ―それぞれの未来―
第35章 失って気付くもの
「横浜、いつ行く?」
機嫌をとろうとしているのか、変にハイテンションな口調だ。
「…行かない。」
「えっ?なんでそんな怒って…--」
「せめて…せめてミライちゃんの事が好きなコウヘイくんでいてほしかった!!」
どんな思いで吐き出した言葉だろう。
綾香ちゃんを思うと胸が苦しくなり、早足で歩き出した彼女を追いかけようと踏み出した。
肩を捕まれ振り返ると、瀬川くんが私を見ていた。
「ちょっとまって」
小さく言い、少しの沈黙の後でコウヘイくんは綾香ちゃんを追いかけ、走っていった---…
…
「大丈夫かなぁ」
アンナがぼやき、私も同意するようにうなずく。
「ま、2人の事だしね。でもまさか同じ店にいるとは…」
平野が言う。
なんだかしらけてしまい、私と瀬川くんは二次会に行かず帰路についた。
---
その後、綾香ちゃんとコウヘイくんについては何の情報もないまま1ヶ月が過ぎた。
「おはよ。行ってくる」
「おはよう!今日は奈美とランチするの。行ってらっしゃい♪」
一緒にいない日の朝は電話で話す事が日課になり、今日も瀬川くんへ行ってらっしゃいを言う。
お昼が近づき、私は支度をしてアップルへと向かった。
---シャランッ…
店内に入ると、なんだか今日はいつもよりも賑わっているようだ。
カウンターに座る奈美のもとへ駆け寄り、上着を脱ぐ。
「ごめん、待った?」
「ううん、全然。何食べよっか?」
バラ組の特等席には”予約席”と書かれたプレートが置かれ、マスターは申し訳無さそうに紅茶を運んできた。
「タイミング悪かったねぇ、いつもガラガラなのに(笑)ごめんよ」
「いいのいいの、気にしないで」
私と奈美はそれぞれ料理を注文し、あたたかい紅茶で身体をあたためた。
「こないだ、恭介が高熱だして」
「えぇ」
「救急車呼んでさぁ」
「ほんとに?!大丈夫なの??」
「うん、今はもう平気。けいれん起こしちゃってさ、私、気が動転しちゃった」
「そりゃあそうだ…無事で良かったぁ」
