不純異性交際(下) ―それぞれの未来―
第3章 始まる新生活
「んー…でも、もしやり直す事になったとしても私不安だし、疲れちゃうんだよね」
「アンナは彼のこと好きなの?好きじゃないの?シンプルに」
「好き…なのかな…うーん…」
「…一度、話してみたら?今のままじゃ、ひたすら彼からの連絡をアンナがスルーして…っていう日が続くよ」
「そうだよね?」
アンナはおもむろに携帯を取り出し、電話をかけ始める。
私と瀬川くんは目を見合わせ、”さっそく今から連絡するのか”と驚いた。
「…もしもし?私だけど…。うん…。うん……ごめん、なかなか時間なくて。…うん…。一回ちゃんと話した方がいいかなって…」
アンナが電話で元カレと話している間、私たちはアヒージョを食べたりワインのメニューを眺めていた。
電話が終わると、「迎えに来るって」とアンナが半笑いで言った。
「えっ?今日?」
「すごいトントン拍子だな(笑)」
「ふふっ、…なんだかこんな勢いがあるときじゃないと会えない気がして、分かったって言っちゃった!」
緊張を突き放すかのようにワインをゴクゴクと飲み干したアンナは、「もう1杯頼んどいて!お化粧直してくるワァ~~」と、トイレへ消えていった。
「今夜どうする?引越し祝いにどこでもお連れしますよ(笑)」
瀬川くんは私の口の端についたアヒージョの油を、指で拭いながら言う。
「ほんと?んん~~。そうだなぁ…そういえば、チーズタッカルビが食べてみたい。でも今日はもう、お腹入らないや(笑)」
「ふふっ。じゃあ明日の昼に行こうか?…っていうかお前、ガスまだ来てないなら風呂とかも困るじゃん。実家か…それともホテルでも行く?」
「あっ!今えっちなこと考えた?」
瀬川くんは笑いながら私のおでこを優しく小突いた。
「今日は瀬川くんの部屋でゆっくりしたいな…梅雨に入ったらね、あじさいを見に行きたい」
「ん。じゃあ引越し祝いはあじさい旅行な」
「鎌倉のね、…--」
話しているとアンナが戻ってきて、テーブルに置かれた新しいグラスワインを口に含んだ。
「たぶんあと30分くらいで来るから、それまでに酔いたい…」
「いや、酔ったら話出来ないじゃん(笑)ほどほどにね」
「うん…」