ひなとDoctors 〜柱と呼ばれる医師たち〜
第102章 突沸
「……。」
真っ白な、柄のある天井。
いつもの病室なら無地なのに、天井にまで柄があるなんて、さすがはVIPの泊まる特別室。
部屋を見渡せばだだっ広く、大きなベッドがぽつんと感じる。
思い返せば、昔、わたしに与えられていたスペースはこのベッドより狭かった。
病院でも家でも、身を沈めるものは全部ふかふか。
使う物はどれも綺麗で清潔で、素敵なお洋服を着せてもらい、お腹が空いていなくとも、美味しい食事を与えられる。
こんな生活、いつから当たり前になったんだっけ…。
ゴミのように扱われ、自分の存在すら不確かだった。
蹴られたり殴られたり、苦痛のない日なんてなかった。
ノワールに来て、あの人がいなくなって、そんな日々から解放された、今が幸せ。
なはず、なのに…。
ベッドの上、頭の中で、今と昔を行き来する。
すると次第に、
もうずっと、大っ嫌いな病院に閉じ込められてる。
毎日苦しくなるし、痛いことばかりだし、嫌なことばかりだし、今だって、いつ先生たちが来るんだろうって、怖くて仕方ないし。
あの人はいなくなった。
けど、その代わりに…、先生たちがわたしのこと…。
今と昔が交差して混じり合う。