ひなとDoctors 〜柱と呼ばれる医師たち〜
第28章 中学3年生
「ひな、もう泣くな。」
「ヒック…ゔぅ……グスン…ヒック…ケホッ……」
最悪のタイミングでまた体調が悪くなって、喘息も酷くなって、楽しみだった修学旅行に行けなくなった。
2週間くらい前から夜に発作が出るようになって、病院に連れて来られて検査して入院。
夏休みも終わって、修学旅行まではあと1ヶ月というタイミングだったから、なんとかそれまでによくなればって話だったけど、
たった今、五条先生に修学旅行には行けないって言われたところ。
「なんで!…グスン、少し前までなんともなかったのに!吸入器持っていけば大丈夫でしょ!?ヒック」
「その場の吸入だけで耐えられないから言ってるんだ。」
「そんなの知らない!抜け出しても行くんだから…グスン」
「何言ってんだ!抜け出したら承知せんからな!」
「別にいいです!怒られても行く!どうせよく怒られるし!」
そう言って、布団に潜って五条先生に背を向けた。
「ひな!」
「グスン…グスン…ヒック……ケホケホッ…グスン……」
「ほら、潜ってたらまた苦しくなるから顔出せ。」
と五条先生が布団を引き剥がそうとするけど、こっちだって負けじと布団をギュッと被り続ける。
「嫌!ケホケホッ、もうどっか行って!…グスン」
「はぁ…。わかったから、俺が出たらちゃんと顔出して休んどくんだぞ。」
と言って五条先生が部屋から出て行った。
もう嫌…
元気になってたのに…
「ケホケホッ…グスン、ハァハァ……」
はぁ、何でこんなに咳が出るんだこの身体は…
五条先生が出てったあとも、ずっと布団に潜り続けて泣いてたら、いつの間にかそのまま眠ってしまった。