ひなとDoctors 〜柱と呼ばれる医師たち〜
第56章 汚れた身体
コンコンコン___
「ひなちゃん、吸入行こうか。」
夕方より少し早いくらいに藤堂先生が来た。
わたしはドアに背を向けて布団をすっぽり被ってる。
「ひなちゃんどうしたの?しんどくなっちゃった?」
と身体を向けてる方に回り込んで来た藤堂先生に、そっと布団をめくられる。
「ひなちゃん…?その目どうしたの…。」
泣きすぎて開かないほど腫れあがったわたしの目を見て、藤堂先生は少しびっくりしたみたい。
そして、頭にそっと手を乗せてくれたけど、
ビクッ…
「触…らない、で…。」
か細く震え上がった声でそう言うのが精一杯だった。
「ひなちゃん…」
藤堂先生が嫌なんじゃない。
でも、わたしの身体は汚れてるから。
こんな身体、藤堂先生の綺麗な手で触らないでほしい。
もう誰にも…、触らないでほしい。見ないでほしい…。
「また、ご飯の後に来ても大丈夫かな?とりあえず来るから、嫌ならその時にまた教えて。」
よっぽど何かあると思ってくれたのか、藤堂先生は珍しく何も聞くことなく、静かに部屋を出てわたしをひとりにしてくれた。