ひなとDoctors 〜柱と呼ばれる医師たち〜
第63章 苦い思い出
受付を済ませると、なぜかその場で診察室に行くように言われて、藤堂先生の診察室に入る。
コンコンコン___
「こんにちは。」
「こんにちは。ひなちゃん座って。」
診察室に入ると、いつもと少しだけ雰囲気の違う藤堂先生が。
立ち上がってわたしが手に持ってるかばんを取ると、ベッドに座るように促された。
「ひなちゃん走って来た?」
…あ。
なるほど、そういうことか。
慌てて来たから確かに走った…
「は、走っちゃいました…健診忘れて1回家帰っちゃって…」
「それはもう五条先生から聞いたよ。走ったらすぐ息上がってしんどくなるでしょ?今もまだ肩で息してるのに、自分で走ってることもわかんなかった?」
って、少し怒ってるような呆れてるような感じで、わたしの手首を掴んで脈を測る。
「えっと、とにかく早く行かないと怒られると思って…。ごめんなさい、約束破りました…。」
「もう、ひなちゃんはそうやってすぐ1つのことしか考えられなくなるんだから…。気分悪くない?」
「ご、ごめんなさい…大丈夫です…」
「そしたら聴診しようか。」
「はい。」
と、ブレザーを脱いでブラウスをめくる。
ネクタイを外すのが面倒で、最近はボタンをいくつか外して捲り上げるスタイル。
「少し長めに聞くから、しっかり深呼吸しててね。」
と言われ、前からも後ろからも丁寧に聴診された。