ひなとDoctors 〜柱と呼ばれる医師たち〜
第68章 お父さんとお母さん
中にあったのは、少し色褪せつつも綺麗に残るカラー写真。
「これ、小さい頃のわたし?」
幼少期の写真を見たことがないわたし。
自分がどんな姿格好だったか知らないのに、写真に写るのが自分だとすぐにわかった。
小さなわたしは、どこかお庭のようなところにいる。
そんな写真がいくつか続いた。
写真の中のこの場所、わたし知ってる…
記憶というより、いつか夢で見た場所。
大きいお家の大きなお庭。
あれは五条先生の家だったんだ。
本当は、夢じゃなくて記憶だったんだ。
一枚一枚、さらにページを捲っていくと、
あっ。
そこに写ってたのはトム。昔の五条先生。
「トムだ。」
「あら、ひなちゃん覚えてたのね。昔はずっとTomって呼んでたわね。」
「はい。それは五条先生に会ってしばらくしてから思い出したんです。まさか五条先生がトムだったなんて、初めはびっくりしました。」
「今とは雰囲気が違うものね。この頃は優しくてもっと素直だったけれど、いつの間にか気難しくなっちゃって。子どもたちにもぶっきらぼうで、よく叱ってるそうね。笑」
「わたしもよく叱られます笑。でも、五条先生はすごく優しいです。どんなにぶっきらぼうで怖くても、やっぱり優しいです。」
「あの子なりの愛のムチなのかしらね。」