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「麻理ちゃん、着いたよ。　起きて」

「あれ？　ここはどこです？」まだ惚けた顔をしている。

「運転手さん、すまない。　直ぐに戻ってくるから少し待っててくれ」
運転手に声をかけ、私は麻理を部屋まで連れていく。麻理の住んでいるアパートは、平均的な学生の住むアパートだった。

「麻理ちゃん、鍵は？」

「カバンに入ってます……」

私は、麻理のカバンを漁り、鍵を見つけ出すと鍵を開け、部屋の中へと入った。

「麻理ちゃん。　僕は帰るからね。　ちゃんと鍵を閉めて寝るんだよ」

私の問いかけに、麻理は答えずに腕を絡めてきた。

「田中さんは、どうしてわたしを抱いてくれないんですか？」

（それは、君が要注意人物だからだよ）とは言えない。


「言っただろ、麻理ちゃんは特別なんだよ」

「じゃあ、キスしてください」

私は、またしても麻理のおでこに口づけした。


麻理は、いつの間にか眠っている。私は鍵を握りしめると、部屋を後にし、外から鍵をかけて郵便受けからドアの中に落とした。


これで外からは侵入できないはずだ。ドアをガチャガチャと回し、開かない事を確認すると、タクシーへ戻った。

そのまま、行き先を自宅に告げ、麻理のアパーとから立ち去った。

どっと疲れが出て、シートへ身体を預けた。


なんとか麻理から逃げないと……。

一先ずの優先的事項に思えた。