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異世界転生しなくても美女とハーレム

第6章 天敵あらわる

>非常階段へ来て
>栗原さんは?

仕事を再開した私に、加恋からのメッセージが届いた。
チラリと麻理の様子を伺うと、営業事務のもう一人の女子社員と何やらやり取りをしている。おそらく、仕事の進め方を教わっているのだろう。


>仕事の説明を受けている
>今から向かう

私は、なるべく目立たないように席を立ち執務室を出る。行き先は、加恋と密会の場に使っている非常階段だ。

私が到着すると、すでに加恋は来ていた。

あいかわらずサスペンスドラマのラストの崖上にいるようで、まさに殺人現場にはふさわしいシチュエーションだと思った。


「課長、やっぱりあの子、気づいたみたいです。 わたし達の関係」

「そ、そうなのか? あれだけ釈明したのに、まだ疑っているのか」
私だって、麻理があのくらいで納得したとは思っていない。

加恋によると、あの後、散々私の家族の事を聞かれたようだ。


妻が綺麗だというが、加恋より綺麗なのかとか、
娘が幼稚園児だと知ると、可愛い娘がいるのに不倫なんてするわけないとか、
結局、男の人は不倫をしても家族の元へ帰るのだとか、
残された不倫相手は惨めだとか、
おおよそ不倫相手にとっては辛くなるような事ばかりを話題にあげたのだという。


「あの子、悪魔だわ」加恋の目がみるみる潤みだし、涙がポロポロと頬をつたった。

加恋をここまで徹底的に叩きのめすとは、やはり麻理はただ者ではない。

「すまない加恋、君には辛い思いをさせているのは分かっている」

「あの子の言う通りなんです。
課長は結局、奥さんの元に帰るんだし、それは分かっていたのに……、
ああやって現実を目の前に突きつけられると、辛い……」

私は、そっと加恋の肩を抱いた。




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