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変態ですけど、何か?

第14章 同棲

あたしは、結局コールセンターを退職し、靖子のマンションに引っ越した。

荷物もそれほど多くなかったし、家電製品や家具も、は靖子の部屋にはひととおり揃っていたので、リサイクルショップに引き取ってもらった。

千絵が使っていた部屋が空いているので、そこをあたしの部屋にすればいいと、靖子は勧めてくれたが、あたしは断った。

あたしの居る場所は、靖子と同じで充分だったし、
靖子の部屋は、言わば千絵の実家になる。

彼女が訪ねてきた時に、お客さんのような気持ちにはさせたくなかった。

引っ越しの手伝いに来てくれた千絵に、
「あたしが居るからって、お母さんに会いに来るのは、遠慮しないでね。千絵の場所はキチンと空けておくから」

あたしが言うと、千絵は涙を浮かべて頷いた。

「お姉さん、ありがとう!私ね、ホントはちょっと寂しかったんだ。
結婚するっていっても、夫婦喧嘩とかしたときに、帰ってくる場所はない。ママはもう、里帆さんのものになったんだって、自分に言い聞かせてたから」

あたしは、千絵の頭を撫でながら言った。

「千絵は、いつまでも靖子の娘だよ。
辛いときには、いつでも帰ってきたらいいし、親子だけで話したいときは、あたしは席を外すからね」

「でも、里帆も家族だよ。あたしのお姉さんになってくれるんでしょ?」

千絵のかわいい申し出に、今度はあたしが泣きそうになった。

「そうだよ。あたしは千絵のお姉さん。
ママに話しにくい事でも、あたしは話してくれたらいいわ。
靖子みたいに、頼りにはならないけど、話を聞くくらいは出来るからね」

あたしは、千絵の華奢な身体を抱き締めた。

もちろん、姉として・・・。



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