秘蜜のバイト始めました
第1章 え? 聞いてませんが?
私がむくれていると、杏果が近寄ってきて耳打ちした。
「紗栄子ちゃん、ちょっと良いかな?」
「ん、どうしたんですか?杏果さん」
「ちょっと、こっちに来てくれる?」と言って、杏果は私を女優の控室へと連れ出した。
「あの……どうしたんです?杏果さん」
どことなく、先ほどまでの凛とした態度の杏果とは違い、どうにもキレがない。
「その……言いにくいんだけど、やっぱり今日、出演してくれるのって無理かな?」
「ええーーー、どうしたんですか? さっきまで自信たっぷりだったじゃないですか」
「う……ん、そうなんだけど、男優さんが、当初予定してた人が来れなくなって」
「私もさっき知ったんだけど、あ、男優さんは別の事務所から派遣されてるの」
(ああーー、あの海とかいう奴、性格悪そうだから、杏果さんもいやなんだ)と勝手に納得する私。
「あの、海とかいう奴が嫌いなんですね、杏果さん」
「え、何でそうなるの?」
「だって、男優さんがイヤなんでしょ?」
「イヤっていうのは、その……そういう意味じゃなくて」
何とも歯切れが悪い、さっきまでの杏果はどこに行ってしまったのだと、私は訝しがった。
しばらく沈黙した後、ふー、と息を吐くと、覚悟を決めたように杏果は話し出した。
「海くんは、元カレなの」
「紗栄子ちゃん、ちょっと良いかな?」
「ん、どうしたんですか?杏果さん」
「ちょっと、こっちに来てくれる?」と言って、杏果は私を女優の控室へと連れ出した。
「あの……どうしたんです?杏果さん」
どことなく、先ほどまでの凛とした態度の杏果とは違い、どうにもキレがない。
「その……言いにくいんだけど、やっぱり今日、出演してくれるのって無理かな?」
「ええーーー、どうしたんですか? さっきまで自信たっぷりだったじゃないですか」
「う……ん、そうなんだけど、男優さんが、当初予定してた人が来れなくなって」
「私もさっき知ったんだけど、あ、男優さんは別の事務所から派遣されてるの」
(ああーー、あの海とかいう奴、性格悪そうだから、杏果さんもいやなんだ)と勝手に納得する私。
「あの、海とかいう奴が嫌いなんですね、杏果さん」
「え、何でそうなるの?」
「だって、男優さんがイヤなんでしょ?」
「イヤっていうのは、その……そういう意味じゃなくて」
何とも歯切れが悪い、さっきまでの杏果はどこに行ってしまったのだと、私は訝しがった。
しばらく沈黙した後、ふー、と息を吐くと、覚悟を決めたように杏果は話し出した。
「海くんは、元カレなの」