優しく咲く春 〜先生とわたし〜
第7章 隠しきれないもの
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眠る咲のお腹をエコーでみながら、早乙女先生は俺と春斗に言った。
ぐったりと眠り込む咲は、プローブの感触すら感じていない様子だった。動かず、寝息だけをたてている。
「あんた達、ほんと仲良しよね…… 仲良しというか、お人好しというか…… この子と一緒に暮らしちゃうんだもん」
「お人好しでは……」
俺は控えめに訂正する。
お人好しと言われると、なんとなく違う。咲を預かることにしたのは、そんなボランティア精神みたいなものではなかった。
「ごめん、わかってる。引き取る理由があったのよね」
「はい」
引き取る理由……。
いつか。
いつか、咲にちゃんと話さなくてはと、胸が痛む。
春斗は眠り続ける咲の顔を、疲れた表情で見つめていた。咲の治療中につらくなって声をかけられなくなる程だった、無理もない。