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龍と鳳

第1章 【出会い編】ベガ星にて

「主星様、ベガ様、どちらですか?
ベガさまぁっ?」

川岸から足を流れに浸して、水の感触と夏草の匂いを楽しみながら昼寝していたら、マーがオイラを呼ぶ声がした。
無視を決め込んで気配を消していると、足音が近づいてくる。

寝そべっているオイラの傍で地べたを突いていた雛鳥のライが、クルッ?クルルッ?と問いかけるように鳴いた。

ショー君が、珍しい地球にしかいない鳥をプレゼントしてくれて、会えない時は俺の代わりに可愛がってね、って。
この子は大きくなったら必ず貴方の役に立つから、って。

何の雛なのかは育ってのお楽しみ、って言って、まだウズラよりも小さかったライをオイラに抱かせたっけ。
今じゃ鶏よりも大きいくらいだけど、見た目はやっぱり雛のまま。
ほわほわした羽根をプルプルと震わせて、オイラに撫でてくれ、ってねだるんだ。

「ライ、しーっ、静かに
ウルサイのが来た」

オイラは、日焼け止めを兼ねて顔を隠していたタオルをそっと引き上げて、もし見つかっても寝たふりをしようと決意する。
賢いライはオイラがタオルの下でもごもごと言った言葉をちゃんと理解して、大人しくしてくれた。

「ベガさまぁ~、あっ、居た!!
んもう、探しましたよ
何してるんですかっ

今日は御前会議の日でしょう
主星たる貴方様がいらっしゃらなくては始められません
皆途方に暮れております
お早くお戻りくださいませ」

「…………」

「ベガ様、寝たふりはおやめください」

「…………」

「ベガ様っ
んもうっ、オーちゃん!!
返事ぐらいしてよっ」

マーが怒ってオイラの顔からタオルを剥ぎ取る。

「んだよぉ、まぶしっだろぉ」

オイラを睨んでいるらしい逆光のマーを下から眺める。
とことことやって来たライが、オイラの頬に頭をこすりつけて甘えた。

「ん、ライ、もう鳴いてもいいよ
マーはうるさいよなぁ」

小さな頭を指で撫でながら言ったら、マーはいよいよキレたらしい。

「オーちゃん!!
いっくらショーちゃんに会えないからって
その態度は駄目だよ!!
あなた、主星なんだからねっ」

むう。
オイラ、主星になんか、なりたくてなったんじゃないもん。

「ほら、そんな顔しないの!!
アルタイル様に言いつけますよっ」

えっ。

「だめっ、ショー君には言うなよっ」

がばりと直角に起き上がって制止した。


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