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龍と鳳

第1章 【出会い編】ベガ星にて

「いーえ、言ってやりますっ
そもそもあのお方が貝を食べ過ぎて、下痢が止まらなくなったのが悪いんですっ
ショーちゃんが悪いっ」

怒りもあらわに言うとマーはしゃがみ込み、膝に頭を乗せて顔を隠してしまった。
肩が震えてる。

「マー…ごめん…」

互いに遠く離れた星でお役目に励む恋人に会えるのは、地球時間の七夕の時だけ。
淋しいのはこいつも同じか。
オイラのお供で一緒に地球に行く時だけが、ニーノとの貴重な逢瀬だもんな。

ショー君の下痢もそうだけど、今年は転送装置のカササギが調子悪くて、危険だから、って許可が下りなかったんだ。

クルルル…。

ライが気遣うようにマーの靴の上に乗って、可愛らしいくちばしで長い脛をつんつんする。
膝から降りたマーの腕がライを探して、それから茶色い羽根をそっと撫でた。
気持ちがいいのか、ライは目をしばたかせてる。

「今、ジュンが何とかしようと頑張ってくれてます
上手く行けばペルセウス座流星群のエネルギーを利用できるかも、って」

「マジで?ほんとにっ?」

「でも、何かあったら大変だから、
その前に一度テストしたい、って言ってた
次元のはざまに落ちたら帰って来られないから
確証が取れるまでベガ様には言うな、って
今、テストに使える動物を探してるって言ってたよ」

マーの言葉を聞いて一瞬浮かれた気持ちが一気に冷める。
戻って来られないかもしれない転送に生き物を使うなんて。

「それはダメ
オイラ我慢するから、ジュンにはそう言って」

「…………」

「マー、ごめんな
オイラ、わがままだった
また次もあるし、我慢するよ
一緒にがんばろ?」

ライがオイラの言葉を肯定するみたいに鳴く。

「ベガ様、本当にちゃんとお仕事してくれる?」

「うん
でもオイラのことベガ様、って言うのはやめて
ちゃんと名前で呼んでくんないとヤル気でない」

俯いた顔を上げて、前髪の下から真っ赤になった眼を覗かせたマーがオイラに頷く。

「サト、一緒に頑張ろう?」

「うん」

オイラはなるべく明るく見えるように笑って立ち上がる。
マーの手を取って立たせて、諦め半分で歩き出した。
振り返るとライはちょこちょこと体を左右に揺らしながら歩いてオイラ達の後をついて来てて。

そんで。
確かに一緒に迎えの車に乗った筈なんだけど。
城に着くと姿が見えなくて。
消えてしまった。

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