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メランコリック・ウォール

第41章 禁断の暴露


「なんだよ?なんでお前が頭を下げんだ??」


私とキョウちゃんがアッと焦ったその瞬間、義父は言った。

「こいつのとこに遊びに来てた女の子はよお……桜子ちゃんなんだよ…っ…」


次第に小さくなる声だったが、桜子ちゃんという言葉はしっかりと親方にも届いているはずだ。


義父もオサムもうつむいたままだったが、親方の顔がみるみる怒りに満ちていくのを私もキョウちゃんも見ていた。


怒りを抑えるように、親方は静かな声で言った。


「俺に、気ィ使って言わなかったんか?桜子だってこと」


私は観念してうなずいた。


「すみません。自分たちも、戸惑ってました。知らないで済むならそのほうが良いとも考えました…。」

キョウちゃんが言いおわると同時に、親方はガタッと立ち上がり、オサムの胸ぐらを掴んだ。


「お前、何したか分かってるか!あぁ?!答えろ!誰の孫に手ェ出したと思ってる!あんな若い小娘にうつつ抜かしやがって、馬鹿野郎!!」


今にも殴り掛かりそうな勢いでまくしたて、すぐにキョウちゃんが止めに入った。


「止めるな森山ァ。俺ァ、どうしたってこいつを許さんぞ!」


興奮している親方の横で、義父が嘆いた。


「殴られたって、おつりが来るわ…ああ、なんてことしてくれたんだオサムよお…」


当のオサムはぎゅっと目を瞑り、顔をしかめている。


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「正直言って、俺ァ森山とアキちゃんの事なんて気にもならねえよ。こんな男と別れて、一緒になりゃええ。好きにやれや。それより、自分の孫を弄ばれたことがどうにも許せねぇよ」


ひとまず落ち着きを取り戻し、ソファに腰掛けた親方が静かに言った。


義父は頭を下げ続けている。


「ごもっともだ。…本当に…本当にこのバカ息子が…すまねえ…。はぁ…」


「…この会社との契約はな、俺とお前の親睦があってこそのもんだ。そうだろう?」


「ああ、そうだ…」


「俺ァ、お前を責めねぇよ。だけどな、オサムは駄目だ。俺ァ、この先もこいつと仕事するなんて絶対ならねえ。いくらお前の息子でもな、それだけは無理だ。」


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