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メランコリック・ウォール

第41章 禁断の暴露


ただうつむいていただけのオサムが口をひらく。

「言い寄ってきたのは彼女のほうで…」

「40にもなった男が、まだそんなこと言うか!!馬鹿だお前は、大馬鹿者だ…っ!!」


義父がこれまでで一番大きな声で怒鳴りつけると、オサムは小さな声で「すみませんでした…」と口にした。





明日からオサムは謹慎という事でひとまず話を終え、私とキョウちゃんは親方を見送りに外へ出た。


「今日はお時間とらせてすみませんでした…巻き込んでしまって…」


「それは別にいい。アキちゃんよ…お前さん、自分の家によその女が来て、自分の亭主と何をしてたか聞いちまうなんてよう。つらかったろう。」


「いえ…私は…大丈夫です」


親方は私とキョウちゃんの肩を順番に叩いた。


「悪いが今はお前たちのこと、なにも考えてやれん。森山、…きばれよ」


「はい。ありがとうございました。」


「明日な」


帰っていく親方の背中は直視できないほど寂しげで、それでいて怒りにも満ちていた。


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翌朝、義父と2人きりの朝食は気まずいものだった。

テレビで流れるニュースだけが静かに鳴っている。


「アキちゃん、ごめんよ。…こんな事になっちまって。」

食べ終わったとき、義父が初めて口をひらいた。


「いえ…謝らないで下さい。お義父さんは何も…。」

「んうう…。」


「私、良い嫁になれなくてごめんなさい…。あの人とはうまくやれなかったですけど、お義父さんには良くしてもらって。亡くなったお義母さんにも、申し訳なく思います。」


「いや、元はと言えばあいつが悪いんだよ。アキちゃんがこの家に来てからずっと、大事にしてなかった。そんなとき俺は不憫に思うばっかりで、なんにもしてやれんかった。すまんかった…。」


「お義父さん…。」


「これからどうなるか分からんけど、俺はアキちゃんのこと本当の娘のように思ってる。嘘じゃない。」

「…はい。」


義父は吹っ切れたようにも見えるし、心ここにあらずとも見える。


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