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メランコリック・ウォール

第50章 渦


翌日以降は、不在着信も大量のメールも一切来なくなった。

当然といえば当然なのだけれど、静かすぎて不気味にも感じた。

あのメール…――
どう見ても、恨みつらみ、怨念がこもっていたように思える。

脳裏に焼き付いて離れない、「死ね」の羅列。


なにかの間違いだと思いたくても、私の妊娠が発覚したこのタイミングで「母親になる資格はない」という内容となると、とても偶然とは言えないだろう。



「はい。…それじゃ、11時には着くように行くんで。――はい。」

キョウちゃんが義父と電話で話している。

明日はキョウちゃんが1人でウォールシイナに行く。






「それじゃ、帰りは遅くなるけど。昼頃にはマサエさんも来るし、なんかあったらすぐ頼れよ。」

「うん…。」

「大丈夫だよ。アキは心配すること無い。」

「ん…。気を付けてね…待ってる。」

「おう。」


玄関で、私の頭にポンと触れてから彼は出かけていった。


心配だから日帰りにすると言ってくれたが、帰ってくるまで気が気じゃない。


あっちで何が起こるのか、オサムがどんな対応をするのか…。


私が1人で考えていても答えは出ないのに、もやもやと終わりのない考えを巡らせていた。



「アキちゃあん?」

お昼になり、マサエさんがトマトをたくさん買い込んでやって来た。


「ごはん食べたぁ?」

「いえ、まだです。」

「食べられそう?」

「トマトなら…。」

「いいわよぉ、たくさん買ってきたから!これね、1箱で600円だったのよぉう。」


なにも知らないマサエさんはいつもどおりのテンションで、私はそれに救われてもいた。



午後になると、ポストを確認しに行ったマサエさんが慌てて居間へ駆け込んできた。


「なんだぁ、騒々しい。」

テレビを見ながらお茶を飲んでいたお父様が訝しげに言う。


「ねえ、これ…こんなのがポストに入ってたのよ…!」


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