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仔犬のすてっぷ

第17章 予期せぬ来客




「さぁ〜ああ、みんら・・・
わらひの、うらを…ひへーーっ!!」

一体何処から出したんだろうか?
マイクを、«すちゃっ!»と構え、びしりっ!とどっかで見たよーなポーズを取った奈緒ちゃんに合わせて、これまたどこかで聞いた事のあるよーな前奏が流れ始める。

 周りをざっ…と見回してみると、ア△ラン・アキラが苦笑いしながらカラオケマシーンを調節しているのが見えて。


「ほらぁ〜!ロラ○も、ひっひょり、うらうんらぁ!!(一緒に、歌うんだぁ!)」
「奈緒ちゃ……じゃなかった、ソシエお嬢様、嫁入り前の生娘が人前で踊りながら歌うなんて、流しの踊り子のような事をしてしまったら、私が旦那様に申し通り出来なくなってしまいます!お願いですからお止めくださいっ!」

精一杯□ラン君になりきって、止めてみる。
ヤケクソだけど、今の僕が出来る精一杯の演技だった。
 

「・・・じゃあは、やめらら、ちゅひらっれきれふ?(じゃあさ、止めたら、つきあってくれる?)」


 両手でマイクをぎゅっと握りしめ、ソシエ奈緒お嬢様は、僕の方をじっと見つめた。
カラオケのバックミュージックも、調節されてフェイドアウトし、小さくなっていく。

 気がつけば、周りの皆さんも僕達のこの寸劇に付き合って、固唾をのんで見守っていた・・・。

(な、なんだろ?この、緊張感・・・(汗))


「わっ・・・分かりました。何処へでも、お付き合いいたします」

おお〜〜…!と、周りから感嘆の声が上がり、パチパチと拍手が鳴り始めた。


「いよっ!ご両人!熱いねぇ〜…!」

森川ディオが、茶々を入れて、ピイィ〜!と口に指を入れて大きな口笛を鳴らした。

その場の勢いのまま、ソシエ奈緒お嬢様に駆け寄った僕は、彼女の手を取って彼女を見つめる。


「・・・さあ、お嬢様……どちらへ参りましょうか?」





「・・・・・・と、とりあえず…お手洗い……」


うぷっ…と、口元を手で抑えたソシエ奈緒お嬢様の具合を気にしながら・・・

僕は彼女をお手洗いまでエスコートした……。


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