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仔犬のすてっぷ

第21章 奈落の裏では


「お?気が付いた」

 ガバッ!と跳ね起きた蒼空を、見慣れた顔が取り囲んでいる。


「酷くやられたな。油断でもしていたか?」

 アキラはペットボトルのお茶を蒼空に手渡すと、自分も同じ物を開封して飲み始める。
 蒼空は自分の体のアチラコチラを動かしてみて、異常がないかどうかを確認しながら寝かされていたソファーから脚を下ろし、座り直した。


「・・・いや、油断なんてしてねえよ。アイツが予想より強かっただけだ」

「…ソレを油断だって言ってんだよ。どんな相手でも全力で倒して客を守るのが俺達のもう1つの仕事だろ?“予想より”なんて言葉、使うのは間違ってるぜ?」

潤はそう言うと、蒼空にコンビニブランドのサンドイッチを差し出した。


「・・・ああ。そうだな……確かにそうだ。
いきなり大技出した所為で、こうなっちまったからな……」

「君の得意な旋風脚……それをどうにかしちゃう相手、ですか………厄介な相手ですね」

対面のソファーに座っていたカリームが、顎に手を当てて考えるように呟いた。


「ちゃんと当てて、その後の追撃の蹴りの予備動作まで考えてたんだが…まさか弾かれて威力を相殺されちまうとは、考えてなかった」

 潤からサンドイッチを受け取り、それを見ながら蒼空は首を左右に振ってコキコキ鳴らす。
多少首は痛むが、ムチ打ちまでは行ってないようだ。


「君のお姫様は、ラシードにお願いして探させてます。とりあえず君は身体のダメージを抜いておいて下さい」

「……んな悠長な事、言ってらんねえよ!アイツが拐われたのは俺の所為だからな」

 もらったサンドイッチの包装をバリッ!と破り、中身を口に押しこむように食べる蒼空に、カリームは厳しい眼を向けた。


「何処に拐われたか判らないのに、どうしようって言うんですか?!」


「・・・アテなら、ある」

「…なに?どういう事だよ、それはっ?!」

潤は蒼空の言葉を聞いて、凭れていた壁から体を離した。



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