テキストサイズ

仔犬のすてっぷ

第21章 奈落の裏では



「サキュバスならまだ可愛い。している最中、絶頂に近い時にいきなり優希の名前、呼ばれてみろ。
一気に力が抜けて、いっぺんに全部持っていかれるぞ」

 その時を思い出したのか、森川店長は舌をだらんと出しながらブルブルと体を震わせた。


「あっ!ひっどーい!それは誰にも言わないでってお願いしてたじゃないのよ〜〜?!」




「・・・あのさ…お取り込み中に申し訳ないが……」


周りのやり取りに嫌気が差したのか、不機嫌そうな顔をして蒼空がソファーから立ち上がった。


「こんな茶番はもういいだろう?俺はアイツを助けたいんだ!何も無いなら、俺は行くぜ?」


「・・・だから、落ち着けって蒼空。
俺が何も無しにこんなバカ話していると思ったか?」

「アンタ、ココに来てからまだ何にもしてないだろう?」


ち、ち、ち☆と人差し指を立てて左右に振った森川店長は、


「確かにこの部屋に来てからは何もしてない。この部屋に、来てからは、な?」

そう言うと、少しだけ得意げにふふんと笑った。


「ああ?!アンタ、何言って……」

「警察署からここに帰ってくる前に、すでに予め手は打ってるって事だ。
景品交換所を襲った強盗の検挙率が異常に高い理由……知ってるか?
 パチンコ屋は、政府からの圧力が強い分、身を護るためには手段は選ばない。
こと犯罪絡みとなれば、例えライバル店だとしても防犯に関しては横の繋がりは異様なほど強い。
«景品交換所襲撃» が犯罪の成功例にならないように、常に神経をとがらせているからだ」

「…それといったい何の関係が・・・」


「その情報網に、この写真のナマを協力者に贈呈する、と言ったらどうなると思う?」

森川店長は、自分のスマホの画面を蒼空に向けてみせた。


その画面には・・・



「…それ、さっき客をなだめる為に見せたやつ………アンタ、それ、いつの間に?!」



ストーリーメニュー

TOPTOPへ