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仔犬のすてっぷ

第22章 Played Fight a Waltz Steps


«ガリッ…『て、敵襲ッ!…ザ…敵は二人…正面から』…ガガッ…ブツッ!»


「……どうやら、出番の様だ、ヒヒッ♪」
「…ほ、本当に自由に暴れて、い、良いんだな?」

小柄ながら異様な雰囲気を漂わせ、誰も近付かせない痩せた男が、唯一側にいる大男に話しかけられ、頷いた。


「ヒヒッ…弟よ……雇い主がイイって言ったんだ・・・オレたちは、好きに殺っていいんだとよ、ヒヒッ……」
「そ…そおかあ〜。じ、じゃあ、あ、暴れまくるんだな、お、オレも……」


「オイオイ…こんなイカれた連中、雇ったのはアンタか?霧夜」

 苦虫を噛んだような顔で奇妙な凸凹コンビの兄弟を見ながら、トーマスは霧夜に話し掛ける。


「ああ。なかなか、イカした連中だろ?この二人がいれば、俺達はなんにもしなくていいだろうさ……アンタが嫌う、銃も使わずに済むだろうしな」

 霧夜薩麻・・・殺人容疑で現在逃亡中のハズの彼は、里香に雇われたボディーガードだ。
雇われたのは、表の仕事 “なんでも屋” で、なので里香は霧夜の裏は知らない。


裏稼業……
ヤクザの手助けを基本の生業とし、頼まれれば人を消すのも厭わないスタイルで長年やって来ていたのだが……
彼が手助けをしていたヤクザグループが警察に麻薬取締で一斉摘発を受けた際、ウッカリ口を滑らせた組長によりその存在が明るみに出てしまった……運の無い殺し屋である。


「ソイツ等は、パクられたヤクザの子飼いでな。汚れ仕事はこいつ等がやってくれていた。
…まあ、見捨てるのも忍びなくてね……」

 ブランドモノのスーツをパリッと着こなし、一見弁護士にも見えるようなキチンとした身なりのこの男だが、殺し屋を名乗っている以上、多分それなりに腕も立つだろう。

バウンティハンター(賞金稼ぎ)のトーマスにとっては喉から手が出るほど取っ捕まえたい連中ではあった。


「分かっているんだろうが、今は依頼主からの仕事を優先してくれよ?俺だってアンタとは事を構えたくは無いんでね」

「・・・ああ。分かってるさ……。その代わり銃は使うな。使った時は・・・」

「分かってる、分かってるって。んな顔で見なさんなっての」



…どうやら、こちら側にも複雑な事情が色々有るようである。


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