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仔犬のすてっぷ

第22章 Played Fight a Waltz Steps


 廃工場と一言で言っても、その大きさには色々ある。

 この場所は中小企業で言えば、小よりは中…おそらくは従業員の人数規模で言えば50人程が働いていたであろう、中の中規模の、工場。
倉庫を改築したものではなく、はじめからそれを目的に建てられたであろう工場跡に彼等は来ている。

 規模は小さめだが、工場の敷地を取り囲む外壁、そして門があり、二階建てのしっかりとした建物・・・・・
頑丈そうな大きな鉄の扉は半開きになっており、そこからは明るい照明の光が見えている。

 そして、そこには蒼空と同じデニムシャツ、Gパン、ロングブーツを身に着けた長身の女性が立っていた。
金髪を後ろで縛りポニーテールでまとめ、皮のグローブを手にはめながらコチラを見ている外国人・・・。

 場所がこんなところでなかったら、外人モデルと言われたらそのまま信じてしまいそうなほど美人だった。




・・・・・だが。



「ようやっとウチの出番が来たがね……
おみゃーら、ウチは随分待っとったんやかんね?ちょびっとは楽しませてちょーよ?」


「・・・台無し…だな(汗)」
「・・・ちょっと、な。凄く、な(汗)」

「……何で、おみゃーら、肩あ、落とすかね?」

ファイティングポーズをとりかけて、脱力して肩を落とす二人を見たサラは首を傾げて彼らに話し掛けた。

「…サラさん……なんで、名古屋弁なんですか?せめて大阪弁なら、可愛いって思えるのに」

 アキラは我慢出来なかったのか、やりきれないよ、とアメリカ式ジェスチャーを見せながら尋ねてみた。

「何言っとりゃあすかあ!名古屋弁はめっちゃんこインテリジェンスな言葉やがな!?たあけた事ぬかしやあすな!この大うつけもんがあ!!」

「………ごめん、アキラ、訳してくんない?」

元々関東出身の蒼空には、何か怒っているという事以外、今ひとつ伝わっていない。


「何言ってるの!名古屋弁はめちゃくちゃインテリジェンスな言葉なのよ?!間抜けな事言うんじゃないわよ、この大馬鹿者が……だってさ」

「…なるほど。つまり、好きで名古屋弁を覚えた訳ね……(汗)ま、良いか。可愛らしかったら戦いにくいし。」


「脱力感を煽るなら、まさにうってつけの方言なんだろうなぁ……信長や秀吉が天下を取れたのはこの言葉のおかげかもな・・・」



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