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仔犬のすてっぷ

第28章 仔犬達の・・・ 


 蒼空は殴られ、段ボールの山に突っ込んでもすぐに起き上がって、向かって来るトーマスを迎撃している。
……でも、旗色は良く無くて。
今度は弾き飛ばされてまた段ボールに埋もれてしまった。


蒼空だって十分強いのに、トーマスはその上を行っている。

……見ている限りじゃあ、子供と大人ほどの差があるように見えて・・・。


「そっ……蒼空あぁっ!!しっかり、してっ!」

 僕は防戦一方になってしまっている蒼空に、あらん限りの声を張り上げて彼を鼓舞しようとした。


「押されっぱなしじゃ、君らしく無いぞっ!もっと足を使って動いてっ!!」

「……おや?嬢ちゃん達が出てきたな…上はとりあえず収まったのかねぇ……」
「………余所見してんじやねえよ、オッサンっ!!」

 ジャブを繰り出し距離を測った蒼空が、右ストレートを放ったけれど…それをわずかに身体をずらしただけで避けたトーマスの反撃の左フックが、蒼空の脇腹にめり込んでしまった。


「がはアッ!」
「ボディーがガラ空きだぞ?しっかり脇をガードしながら戦わねえとな?」
「……ぐっ・・・余計なお世話…だっ!」

 再び左ジャブを出し、蒼空はトーマスとの距離を開けようとするけれどしっかりガードしているトーマスは、離れるどころか更に一歩踏み込もうとしているのが……上から見ていると分かる。

「蒼空っ!左バックして右打ってっ!」

トーマスが右脚を踏み出すタイミングに僕の声がとどいたのか…蒼空が上手く左足を下げ、右フックがトーマスの脇に入った。

「?!おぐ……」
「ガードがガラ空きだせ?オッサン」

そのまま蒼空がもう半歩踏み込んで追撃の右アッパーを繰り出したけど、トーマスはそれを上半身をスウェーさせてギリギリでかわした。


「……急に動きが良くなってきたじゃねえか。良い所を見せたくなったんか?」

「ほざけよ!これは元々の動きなんだよっ!はああああぁぁっ!!」

 だだだ〜っとパンチを繰り出してわざとガードの上からでもお構い無しに拳を叩き付け、トーマスとの距離を取った蒼空が左脚に力を乗せるようとしているのを見た僕は思わず叫んでいた。


「ソレは、駄目だっ!」


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