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仔犬のすてっぷ

第28章 仔犬達の・・・ 

 

 蒼空が狙うのは、おそらくはガードも避けるのも難しいローキックからの何かしらのコンビネーションアタックだ。
 トーマスとの間合いから僕が推測出来る…という事は当然あのオジサンも予測済み……いや、誘っているかもしれないんだ。

そして、その通り……蒼空がローキックのモーションに入るよりわずかに遅れて・・・いや、タイミングをずらしてトーマスの下半身が少し沈み、同時に上半身に捻りを入れ始める。

 ローキックを避けながらの回し蹴り……旋風脚だ!
カウンターでそんなもの喰らったら、いくら蒼空でもただじゃあ済まない。


「…ガードしてッ!!」

 僕の声がなんとか間に合ったのか、蒼空は咄嗟に両腕を顔の前でクロスさせ、トーマスの旋風脚をガードした。
 でも、ローキックを出しながらの踏ん張りの利かない状態で受けたから蒼空はかなりの勢いで吹き飛ばされ、工場の床を激しく転がされてしまった。


「そっ…蒼空っ!」

 ここ(二階)から見ているだけでは我慢出来なくなった僕は、階段をヨタヨタしながら駆け下りて蒼空の元へ急いで駆け寄った。


「だっ…大丈夫かいっ?!」

「……あ、ああ。お前のアドバイスのお陰で、見た目程ダメージは来て無い。サンキュ」

体をすぐに起こして健在をアピールした蒼空は、僕の方を見てからいきなりピタリと固まった。




「・・・・・?なんだ、今の……
今のは感が良くてガード出来たって感じじゃねえな……」

 トーマスは蹴りを入れた自分の右足の感覚を確認するように足を振りながら首を傾げている。


「・・・何だ……嬢ちゃんの声は俺も聞き取れた……
あの時ガードしても間に合わねえタイミングで蹴りが行ったのに………ガード、された?」


トーマスは、考えても出ない答えを確認しようとして蒼空に声を掛けてきた。



「おい、坊主!オマエ、今のガードは・・・」


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