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仔犬のすてっぷ

第28章 仔犬達の・・・ 


「まるで格ゲーでチートなワザ使われて、当たった攻撃が無効化されてる……みたいな気分だぜ……?」

「俺は別に、特に何かした訳じゃねえぞ?チート技で実技に勝てるんなら道場で訓練する意味が無くなるしな」

・・・確かに……
さっきから、僕も少し妙な感じに囚われていた。

 時折蒼空の動きが、僕が指示を出すより早く «指示したいように» 動いてくれている……そんな風に感じる時が何度かあったんだ。
特に今のは……僕は指示できなかったのに……
蒼空はそれが判ったかのような、機転を利かせた避け方をした……そんな感じがしてならない。


「・・・アレが戦いで培った “勘” …だっていうんなら……俺達の商売は上がったり、だが」

「馬鹿言えよ。アレはそんなもんじゃねえよ」


 蒼空は、“よくぞ聞いてくれました”と言わんばかりに胸を張り、その後右親指をびしいっ!と立ててキッパリハッキリと赤面モノの台詞を言い放った。


「二人の、愛の力だああぁっ!」


 外の天気は悪くは無かったはずだけど、このセリフを聞いた直後、トーマスの背後で稲光が走った。


「なっ…なんだと〜〜…っ?!」

・・・こんな場面なのに、妙な事には付き合いの良いトーマスと、高らかに笑う蒼空を見て僕は赤面しながら呆れ顔をするしか無かった。


「さっきから確かに、俺の頭の中にいろんな〈閃き〉が過ぎってるんだ。それが優希の指示に重なってるんだから、愛の力に違いねえ!」



・・・え?なに?それ………



「……つまり、嬢ちゃんが指示しようとしている事が言葉より先にお前の頭に入ってきて、あの動きが出来ている…って事か?」

 そう言うと、トーマスは僕をじ〜っと見つめて来た。そして妙な事を聞いてきた。


「それって…嬢ちゃんがエスパーか何かだって言ってるようにも聞こえるが…嬢ちゃん、お前さんは、そうなのか?」




・・・・・・は、はあ?!
ぼくが、えすぱあ???


「…ないない!ソレは無い!僕はただの普通の人間ですっ!」

 僕はその問いかけに首と頭をぶんぶん音が出るくらい激しく振って全力でソレを否定する。




 だいたい……そんな摩訶不思議な力が僕にあったなら、もっと楽な人生送って来てますって!





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