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仔犬のすてっぷ

第28章 仔犬達の・・・ 


「……ただ、嬢ちゃんの “勘” が良いだけ……か……?」

「…色んな意味でのニュータイ…ぶがっ?!」
「新人類じゃないやい!」

 蒼空の言葉にブラックコーヒーの空き缶を投げつけ全力否定する僕を、トーマスは神妙な顔で見ていたけど……。
僕らのやり取りを見て、ふっ…と小さな溜め息をついたあと、



「・・・嬢ちゃんも、やるか?」

軽くファイティングポーズを取り、トーマスが僕を誘って来た。


「今までのがコイツの “戦いの勘” じゃ無く、単に偶然だったなら…この後の戦いはコイツだけじゃ、勝てないぜ?」

「駄目だ優希。お前はまだ……体は本調子じゃないだろ?」
「……優くん・・・そんな身体で……でも、きっと止めても無駄……なんだね」

 僕の隣にいて、さっきから心配そうに体を支えていてくれる奈緒ちゃんは潤んだ眼で僕の顔を見た。

「優くんも…男の子なんだね
……顔が…そう言ってるから………」

「……そうだね。確かにそうだ。
僕もここで何とかしないと……トーマスは納得して開放してくれそうも無いし…」

まだふらつく身体に鞭を打つように自分の尻をバチンっ!と叩いてから、蒼空の横へ歩み寄った。



「……馬鹿だな…
アレと本気で戦ったら・・・痛いだけじゃ、済まないぜ?
参加するって事はケガだって覚悟しないと……」
「心配しなくても君が不甲斐ないから……って思ったからじゃないから。
ひとりだけで戦って勝てない相手でも、僕等ふたりでなら、勝てる気がするからさ」


「・・・言ってくれる。簡単じゃねえぞ?あのオッサン、痛みに耐えて攻撃してくるからな」
「見てて分かってる。君にもアレが出来たら闘い方の幅が広がるかもしれないよ?」
「俺は普通の人間だから、そりゃ無理な相談だ、な」
「君が普通?じゃあ、これからは少し遠慮して叩くようにしておくよ」
「(汗)遠慮して、なかったんか〜い!」

 こんな馬鹿な会話を交わしているだけなのに、僕の体のコンディションがぐぐっ…と上がってきて・・・テンションもそれに併せて上がって来た。
それは蒼空も同じらしく、さっきまでの雰囲気から気配が変わっていく。



「・・・いくぜ、優希!」
「ああ!行こう!」


僕らはラスボスへ向けて大きく踏み込んだ。




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