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仔犬のすてっぷ

第28章 仔犬達の・・・ 


(……後は、君のカカト落としを・・・
何故だかわかんないけど、トーマスがせっかくヒントをくれたんだ。それをお見舞しよう!)

話し合いがまとまったところで、周りの視界がゆっくり狭まって来た。
……どうやら、そろそろ時間切れらしかった。

(…上手くやろう、蒼空)
『ああ。身体のダメージ上……これが失敗したら二度目は無い。コレがラストチャンスだ、な』

ジワジワ狭まる景色の中、またさっきの戦場のシーンがチラホラと見えてきて・・・。



(・・・さっきの女性……あれは…
また、見えて来……彼女は……僕か?!)


 僕より多分歳を重ねていて……髪の長さも違うし、身体のラインも女性特有のもので……
何より……控えめだけど、女性の胸がある。


 今度のは彼女が生きていた時の様子らしく・・・
夜、焚き火を囲みながら穏やかなひと時を過ごしている……みたいだ。
皆が何か食事し、談笑し、誰かがギターを奏でて……
そんな中で、鍋料理を皆に振る舞う女性がいて。

彼女の優しく暖かな微笑みが、その場の皆を和ませていた。


『・・・優希……
 “力” が、その鱗片だけでも目覚めたのなら、コレが見えているはずだ。
俺が体験した恐怖や苦しみ……悲しみ……怒り。
それを今のお前に感じて欲しい。
それを糧にして、強くなって・・・・・』







「・・・ぅあ、あが……も、もどっ……た?!」

急に視界が晴れて、同時に身体の熱さと怠さと痛みが一度に被さってくる。

・・・どの位時間が経過したんだろう?
さっきのあの時間は……止まっていたのか?
最後のあのビジョンは……トーマスの心の中のものなのか?

そもそも、今のは一体何だったんだ?!

 解らない事だらけだけど、今のが夢じゃ無いのなら……作戦通りに行動して、まずはこの人に……勝たなきゃ!


「そ、蒼空……やれる…かい?」


今のが夢かどうか、蒼空に声をかけて確認してみる。


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