テキストサイズ

仔犬のすてっぷ

第29章 反撃、そして・・・


「まっ……まだやるってのかこのやろおおぅ!」

 しどろもどろになりながら構える蒼空と、その影で怯えながら自分を見る僕を見てから、トーマスははあぁ〜〜っ……と深い溜め息をついた。


「……いいや。もう、終わりだ。
これだけの事をされたんだ。負けを認めてやるよ」


余程蒼空の踵落としが効いたらしい。
トーマスはまだ、蹴られた顔面を痛そうに擦りながらそう言った。


「・・・姫さんも、それで良いよな?」

彼が見ている方向には、とりあえずって感じに服を羽織った明美さんがいた。
ややふらつきながら、ゆっくり階段を降りてくる。


「良いも何も……アンタまで負けちゃったら、私にはもう手駒が無いじゃないのよ……」

「……明美……」

 幸お姉ちゃんはゆっくり階段を降りてきた明美の側に近寄ると、彼女の肩を優しく叩いた。


「・・・悪かったわね、幸。あんたの従業員に色々ちょっかい出しちゃってさ」

「明美……自分がした事が解って、反省しているなら強い事は言わないわ。
後は警察に任せるから。でもその前に貴女も含め、うちのメンバーに会わせたい人物がいるの」


 幸お姉ちゃんの言葉が終わると同時に、さっきから気になっていた二人の女性が軽く会釈して話し出した。


「皆さんはじめまして。
私は超常現象及び時空における事象科学研究調査室……通称〈PASTEL〉所長の相田と言います。そしてこちらは私の助手をつとめる・・・」

「山田夏美です。お久しぶりね、優くん、明美」


・・・な、夏美お姉ちゃん?!

メガネかけてるから解らなかった……(汗)


「ぱ…パステル…え?絵描き道具??」

超常現象が、なんとかって…?
頭に入ってきたのは “パステル” って言葉だけだ。

「Paranormal And Space - Time Event Science Research Laboratory……略してPASTEL……あたし的には気に入ってるんだけどな……」

「その、ホニャララが俺達に何の用?」

僕に理解出来なかったものが、蒼空に理解出来るとはあまり思えない。



当然の反応として、彼は目が点になっていた。

  

ストーリーメニュー

TOPTOPへ