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仔犬のすてっぷ

第30章 共振


「…そろそろタイムアウトかしら?景色がちらほら見え始めてる…」

相田博士がそう言ったとたん、ずわ〜〜っ…と景色が流れ出した。



「…もう一つ。この《共振》は1日に何度も使うのは難しくてね。体力だけじゃなく、気力も激しく消耗するから……制御する精神力が欠けてしまってコントロールが出来なくなってしまうわ。
使い過ぎると最悪、かなりのしっぺ返しが来て何が起こるか分からないから、連発しないでね☆」


(え゛……今日、僕らは2回目……)
『アンタそれが分かってて使わせ……あ〜っ!?消え・・・』

どしゅ〜〜っ!!と音が流れ込んで、一気に現実に引き戻されていく。
時間の流れに押し潰されそうなそんな感覚が僕を包み込み、思わず目をギュッと閉じた。




「………終わったみたいね。なには兎も角…無事で良かっ……」

「おい!博士アンタなあ……!」

 いつになく血相を変え、相田博士の胸倉を勢いよくガッ!と攫むと、蒼空が声を震わせながら話し出した。


「・・・危険な事が解ってて俺達にあんな事させたのか?
俺はともかく、優希に何かあったら…テメェがオンナでも容赦しねえからなッ!」


「……落ち着け坊主…それくらい、その人が一番知ってるよ。
何しろそのラビットの奇跡の暴走事故で、愛しの人を消し飛ばしてしまった張本人なんだからな……」

 
トーマスの神妙な顔からして、それは本当の事なんだろう。
怒り心頭だった蒼空も、それを見て博士の襟をバツが悪そうに放した。


「ごめんなさい…確かに配慮しなかったアタシが悪かったわ……」
「……いや…分かりゃあいいんだ、分かりゃあ……」

少しだけ・・・彼女の素性が知れて、でも素直に怒りを収めることが出来た蒼空は頭をガシガシ掻きながら呟くように言った。


「…私は…確かにこの研究を始めたのはそれがきっかけだし……もしかしたら彼女をまだ救えるかもしれないって思っているけれど・・・」

そこまで言うと相田博士は真っ直ぐな眼で蒼空を見た。


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