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仔犬のすてっぷ

第31章 激突する、LOVE IT


ーー ズズンッ!

ーー ビリビリビリビリッ!

激しい振動が空気を震わせ、激突音で廃工場の壁や窓ガラスが軋む音を出し悲鳴を上げた。


 一方的に攻めたてる霧夜の攻撃を、口元を上げて歪ませたトーマスが尽く(ことごとく)往なして避ける。
往なされた攻撃の余波がトーマスの斜め後ろで衝撃波となり、地面や工場の壁や柱に当たって弾け、小さな爆発を起こしていた。


「・・・お、俺達はあんな連中相手にしていたんかい?!勝てないはずだぜ……」


 冷や汗を拭った蒼空が、最早他人事になってしまった戦いを見ながら呟いた。
 確かにラビットの力を使っているのは霧夜だけど、それをそんな力を使わずに迎え撃ち、ニヤけているトーマスもとんでも無い人間だ。


「……オーナー…お取り込み中悪いんだけど、モリリン店長よりコイツの体力を先に回復してくれないか?
霧夜の相手をするには優希の力は絶対に必要なんだ」

「……心配しなくても、鼻っからそのつもりだよ。
アユは抱きしめて俺の回復をしてくれてるだけじゃなく、力を増幅するために俺を抱きしめてんだからな。
……その分俺の回復量は少なくなるが…な」


そう言うと、森原店長は僕へ手を差し出した。


「アユの処女を奪った相手がお前なのは俺もこいつから聞いて知っている。アユ……いや、幸のラビットの “力“ を最も受けられるのはお前だよ、林原」

がしっ!と僕の手を握ると、自分と入れ替わるように僕を引っ張り、幸お姉ちゃんの胸元へ押し込んだ。


「て、てんちょお・・・」

「そんな顔すんな、林原。ココで回復を拒んで役に立てなかったらそれこそミステイク、だぜ?」

親指をびっ!と立てて森川店長がニヤッと笑った。



「・・・いえ……(汗)
それはまあ、そーなんですけど……今はあまりドヤ顔はマズイかと・・・」

 僕が冷や汗を流しながら見る方向を見た森川店長は、その先にいて蛇に睨まれたカエルのように固まって動けなくなっている蒼空と、蛇の立場になってギラリと彼を睨む奈緒ちゃんを見て、慌てて指を引っ込めた。



「……状況は分かってるけど、さっきの優くんとのキスといい、今の状況へ導いた事といい……
蒼空、後で覚えてなさいよ……」


・・・ある意味、今、一番怖い相手は彼女かもしれない……(滝汗)

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