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仔犬のすてっぷ

第31章 激突する、LOVE IT


「ごめんなさい、奈緒ちゃん。これもアノ悪いやつを捕まえる為だから……」

 流石の幸お姉ちゃんも、奈緒ちゃんの様子に悪いと思ったのか……僕を抱き締める事を戸惑ったようだった。


「大丈夫です。幸さんは優くんの治療をお願いします。私って、超能力は持っていないけど、なんとかしたいって気持ちは皆さんと変わりませんから・・・」

 そう言うと奈緒ちゃんは深々と幸お姉ちゃんに頭を下げた。


「…え〜っと……」
「……大丈夫よ、優ちゃん。さぁ、身体の力を抜いて、身を任せて……」

 大丈夫だと言われても…改めて抱かれるとなると、やっぱり照れくさいものが有るなあ………


とか考えてる間もなく
«むぎゅん!»と包み込むように抱きつかれて、僕は幸お姉ちゃんの胸の中に埋まった。


(……温かい、この感じ………何だか懐かしい・・・)

小5のときに経験した時のことじゃなく、もっとなつかしいというか・・・
甘くて、優しい匂いに包まれて、守られている感じ……。

そうか…これ、きっと…赤ちゃんがお母さんの胸の中で抱かれている時はこんな感じなのかも・・・


「…おや、いけませんね…… “姫” を回復しようなんて。私がそれを許すとでもお思いですか?」

ヒーリングの気配を感じたのか、霧夜の殺気を帯びたセリフが聞こえて来て

…… «殺気» がこちらに向いた。

マズイ!


「……その女ぁ!余計なことを、するんじゃなあい!」

 素早くトーマスから距離を取った霧夜が、凄いスピードでこちらに向けてナイフを投げつけて来た。
気配でナイフの飛んでくる軌道は分るけど、今の僕にはどうすることも出来ない。


…このままじゃ、幸お姉ちゃんがっ!
そう “思った” 時だった。



「……大丈夫だ、優希」

ーー パシッ!


 普通なら、避けるのも難しいスピードで飛んで来たソレを、蒼空はゆっくり飛んで来た紙飛行機を受取るかのように……いとも簡単にキャッチした。


「…お前が見えてるモノが、俺にもしっかり伝わって来てる。
今ならピストルの弾も取れそうな感じがするぜ」

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