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仔犬のすてっぷ

第32章 決着


「……何だ?薬のせいで、痛くはならないんじゃなかったのか?」

 両足が変な方向に曲がってしまい、もはや立ち上がる事はできそうにない霧夜がうつ伏せのままもがく姿を見て、トーマスが小さなため息をついた。


「おおおおぉぉぉ……わっ、私の、あしがぁ…足がああぁっ!」

よく見ると、倒れた霧夜のいる辺りが濡れていて……どうやら彼も失禁したらしい。


「いい年こいたオッサンが、おもらしたぁ…情けねえな。それとも、お前が行っていた通り、イッて漏らしたのか?」

「あああぁ…うっ、うるさああい!よくも、よくもおお……」



「…奈緒ちゃんっ!」

 僕は幸お姉ちゃんから離れ、蒼空にお姫様抱っこされている奈緒ちゃんのところまで駆け寄った。

「…見た目は大丈夫そうだ。とりあえず、怪我はしてないみたいだぜ?」

ほっと一息ついたものの……奈緒ちゃんの表情を見る限り、安心できる状態では無かった。
瞳孔が開き、口からは涎を垂らしながら…粗く息をして……意識があるのか無いのか、分からない。
かろうじて僕等の言葉に何かしらの反応はあるみたいだけど……。



「…さ〜〜て、きぃりぃやぁ〜〜。その、痛みを快楽に変えるっていう薬の効能を、じぃ〜〜っくりと味わって、みるかあ?」

ぽきぱきぺきっ!と、手を組んでいい音を出すトーマスが、霧夜を見下ろしたままニタア〜ッと意地悪く笑う。 


「まっ……待て!私はただ、依頼されたことを…だなぁ!」

 地べたに這いつくばったまま、わたわたする彼に、もはや悪役の威厳は感じられ無い(…まあ、最初から少なめだった気もするけど)。


「……まずは、おさげのにーちゃんを痛めつけた分な」

ばしいいん!

平手打ちなのに、物凄い音がする・・・。
ありゃあ、痛いに違いない。


「うちのサラに暗示かけた分★うちの姫様をぶっ飛ばした分★そして……」

バシバシ顔を引っ叩かれ、涙を流す霧夜に…
トーマスはさらに追い討ちを容赦なく叩きつけていく。


「向こうの世界で皆に迷惑かけた分★コッチで色んな人達を騙して金を巻き上げた分★そしてコレがあの嬢ちゃんに薬を打って苦しめた分★」


今度はゲンコツでタコ殴りにしてしまっている。
……殺しちゃわなきゃイイケド(汗)


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