テキストサイズ

仔犬のすてっぷ

第32章 決着


「やあいぃっつ?!」

顔を真赤にして、それから


「ほーっ?!おおほほほほおおおおっ!!」

 どっかのアメリカ製ネコとネズミアニメの、ネコが痛がって飛び跳ねるのとおんなじような声とリアクションを起こした蒼空の奇っ怪な行動に、トーマスと霧夜は同時にびくうっ!と体を飛び跳ねさせて驚いた。



…今ですっ!

『……え?あ、ああ!』

ちょっとだけ間があったけど、トーマスが霧夜よりひと足早く動き出し、霧夜に急接近する。


「…ちいいっ!?」

 それに気付いた霧夜もバックステップしようとしたが、奈緒ちゃんを羽交い締めにした状態の上、驚いた分反応が遅れた。

 トーマスの手刀が霧夜の右腕を直撃して、彼の手にしていた大型ナイフはくるくると宙に舞う。

…それでもバックステップして、またナイフを出そうとする霧夜のビジョンが見えた僕は、その先回りの行動を頭に描いた。

 そのまま追尾してハイキックと見せかけての足元をすくうローキックを……

 トーマスはその通り霧夜の顔面めがけて蹴りを出し、避けられないと悟った霧夜が頭部をガードする…
重いトーマスの蹴りから頭を守るために、両腕でガードしようとして、羽交い締めにしていた奈緒ちゃんが、霧夜の体から一瞬離れる……




…蒼空っ!今だっ!!


『おう!任せろっ!』


 トーマスほどのスピードは無いものの、それでも奈緒ちゃんを助け出すには十分過ぎるほどのスピードで、蒼空が動く。

 トーマスのハイキックが霧夜に当たる手前で、劇的に蹴りの軌道が変わり、キックはローになり、霧夜の両膝を激しく的確に撃ち抜いた。


ーーー ぐにゃしゃあああっ!

「ギイいやあああァァあーーっ!?」



 霧夜の悲痛な悲鳴が上がるのと、蒼空が奈緒ちゃんをキャッチしたのがほぼ同時だった。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ