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仔犬のすてっぷ

第32章 決着



「ちょっと面倒くさいが…警察には俺達は一応、バウンティハンターとして知られているし、下手に逃げて指名手配を受けるよりはその方が身元が判っている分、都合は良さそうだからな。
問題はあの…霧夜だ。
 金の力は使えなくなるからラビットの力で逃げたりは出来ないだろうが、ヤツは催眠術を使って脱走する可能性はある。
 俺が奴を向こうの世界に連れ帰るまで、油断は出来ないってことは忘れないでくれ」

 それだけ説明すると、トーマスは幸お姉ちゃんの元へサラを連れて離れていく。

サラさんは致命傷にはならなかったけど…かなり辛そうだった。


「サラ…ありがとよ。あれ…優希を守るために盾になってくれたんだろ?感謝するぜ」

「…違う…がね。ありゃあ……わしはただ、あの…たわけがしようとした事が解らんまま、ただ妨害しようとしただけ……やから…気にせんとき?」

 蒼空の言葉にそう言って答えると、左手を少し上げて問題ないことをアピールした。

 
「お二人共……迎えが来ました。急いで!」

 カリームの声が工場内に響くと同時に、建屋の外から爆音が聞こえてくる。

それも…三つ。

「一旦別れます。僕とアキラと潤とモリリンは一番目のヘリに、蒼空と優希くんとその彼女は二番目のヘリに、後の方は三番目のヘリに乗り込んでください!急いで!もう、警察が到着してしまいます!」

とりあえず、僕らはカリームの指示に従って移動を開始した。


………あれ?
博士、夏美お姉ちゃん…それに幸お姉ちゃんが…
移動しない?!


「オーナー!逃げないと…」
「あなた達は、博士の予約したホテルへ急ぎなさい。私は……サラさんの手当もあるし、暁美について話さなきゃならない事もあるから残ります」

「私達も…色々フォローするからこっちは心配いらないわ。上手くごまかしておくから早く行きなさい」


「何してるんですか!お二人共、早くっ!」

仕方が無さそうに、蒼空は奈緒ちゃんを抱えてヘリへ向かって走り出した。






『優希…縁があったらまた会おうぜ』


えっ?!


今…トーマスの声が…聞こえた?
ような……



「どうした?優希」

「あ、う、うん・・・なんでもない」



ヘリに乗り込んで空に上って。
もう、結構離れたのに……


…これは、僕の空耳だったのかもしれない。


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