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仔犬のすてっぷ

第34章 事件が終って・・・


 この後、奈緒ちゃんはラシードさんが用意した送迎車に乗って帰っていった。


その、別れ際・・・。



「・・・本当に、いいの?僕で良ければ家まで送るのに……」

 身支度を整えた彼女の後ろに車が横付けされ、自動でドアが開く。
流石に目立つからかリムジンなどではない、ごく普通の国産高級車のカテゴリに入るミニバンタイプの車だったけど、それでもこの子を護衛するお付きのお人が二人乗り合わせていて正直肩身が狭そうではある。


「むりすんなよ。本当は送って欲しいんんだろ?だったらそう言えば良いだけの話じゃねえか」

「違うのよ、蒼空。貴方がいるから、わたしが帰る……それだけの話しよ」

 笑顔でそう話す奈緒ちゃんに「はあ?」と首を傾げて見せる蒼空を見て、もう一度くすっと笑った彼女は…今度は僕の目をしっかりと見つめながらこう言った。


「ココで一緒に帰る選択をしたら、私、蒼空の事を認めてしまいそうだから。だから、ここで分かれるの。
……男の貴方には解んないでしょうけど……だから、良いのよ、これで」


「…女としてのプライドか何かか?そんなもん、かなぐり捨てねえと俺には勝てねえぜ?」

 頭の後ろに両手を組んでそんな事を言う蒼空に苦笑いのような笑顔を見せた奈緒ちゃんは、そのまま車に乗り込んでドアを閉めた。




「絶対に、負けないから」



 窓越しに、奈緒ちゃんが喋る言葉は聞こえていなかったけど、僕にはそう言っていたように見えた。


「じゃあ、ね。優くん。また今度、二人っきりでゆっくりお話しようね☆」

 車が動き出した時、窓を開けてそう、大きな声で明るく言い放った彼女はそのまま手を振りながら走り去っていった。





「・・・・・んじゃ、俺達も帰りますか?」
「帰るって、蒼空の住んでいる部屋って何処なのさ?送っていくよ?」

「・・・何を今更。
今の俺の帰る場所は、優希の住んでいるアソコ、しかねえだろ?」


しれっとそう宣った蒼空に


「居候を決めこむのは構わないけど…それならこれからは部屋代は折半してもらおうかな?」

と返すと


「ちぇっ…しっかりしてやがるぜ……」

そう言いながら、彼は墨の後をついてくるのだった。



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