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仔犬のすてっぷ

第34章 事件が終って・・・



久しぶりの我が家・・・。


 ほんの数日しか経っていないのに、なんだか数ヶ月帰ってきていなかったかのような懐かしさを感じる。

 ドアノブに鍵を差し込み、左へ回す。
「かちゃん☆」と軽い音を立て、施錠が解除され……僕はノブを回しながら手前へドアを引き込む。
これだけの事なのに…なんだかワクワクしている自分がいて。

そのまま部屋の中へ足を踏み入れようとした瞬間



「ちょ〜っと、まったあ!」

 僕が引いたドアをガッツリ掴んだ蒼空が、思いっきりドアを開き…思わず離してしまったドアノブを持っていた右の腕と、ドアの隙間をするりとすり抜けた彼は、僕より早く部屋に入り込んでいく。


「え?!あ、ちょっと、蒼空?!」

 家主を差し置いて、先に部屋に入るなんて…美味しいところを横取りする気だな?!
……なんて思ったんだけど。


 玄関に立った蒼空が、閉まりかけたドアを片手で抑え、僕と目を合わせる。




「……間に合った……
「おかえり、優希」……っ、
やったぜ!一度やりたかったんだよ、これ!!」





・・・・・。

いたずらっ子のようにニヤニヤしながら、でもなんか少し照れくさそうにそんな事を言う蒼空を、僕はまっすぐ見た。



・・・そうか……。
そうだよ。


誰かが。帰ってきた僕を迎えてくれる。


 
僕はこんな事を…そんなシチュエーションをずっと前から望んでいたのかもしれない。

だって、こんな即興でこんな事をされても、なんかこう……胸にグッと来るものがあるんだもの。



「・・・ただいま、蒼空」

「…どうだ?なんか、嬉しいだろ?迎えてもらえると、さ?」

「そうだね…例えそれが居候の君だとしても、嬉しいかもしれないね」

「ちぇっ…一言多いんだよ。優希は。素直に喜んでくれ……おぅ?!」

 僕は彼の胸に軽く拳を当てていたずらっぽくニッコリ笑うと、もう一度言ってみたくなった言葉を口にした。





「・・・・ただいま、蒼空。ありがとう」



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