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仔犬のすてっぷ

第36章 36章 これから先は・・・


…で。

 エンケンさんの代わりというわけではないだろうけど、ここにはもうひとり、負けず劣らずイケメン中年のオジサマが…ちょこんと僕らの座っている椅子の隣にやって来て座った。


「よう、じょうちゃ…じゃなかった、坊や達。元気に不純性交友してるかい?!」

だああああああっ!!

僕と蒼空は明るい声で話しかけてきたその人物を見てぶっ飛んだ。


「とっ…とーますさん!?なんでっ!?」
「オッサン、元の場所に帰ったんじゃねえのかよっ!?」

 話しかけられた当人は至って平然としながら缶コーヒーをすすっている。


「いや、その、なんだ……俺としてはまだ向こうへ帰るわけにはいかなくて、だな……こらこら、そんなもん投げつけたりすると、そこらへんにいる警察官に取り押さえられちまうぜ?」

 パチンコ屋に来たお客さんがくつろぐためのひとりがけソファを頭上まで持ち上げて洗い息を吐く蒼空を涼しい顔で見てニヤリと笑った。


「たとえそうだとしても、何で貴方がここにいるんですか?サラさんの具合はどうなんです?病院で看病しなくて大丈夫なんですか?」


 あの時逃げずに警察に出向き、サラさんを警察病院で見てもらうために残った彼が、平然とした顔をしてここにいる……
 つまり、彼女は?


「ああ。大したことはない。多少血は出たが弾は貫通したし脇腹の浅い部分を通り抜けたから内蔵にもダメージはないそうだ。ただ、バウンティハンターという肩書があるんで俺もアイツもしばらく監視の目が付くことになる。
今頃は白衣のカッコいいお兄ちゃんとイチャイチャしてんじゃねえか?
警察病院の先生や看護師に、アイツ、メロメロになってやがったからなぁ」


 そう言いながら苦笑いするその表情から見て、本当にサラさんは問題ないようだ。


「で、オッサンがどうしてここに来てるんだよ?サラが無事なら次にやることは…」

 そこまで蒼空が話したところでトーマスが右手を差し出し、人差し指を立ててから左右に振って蒼空の話を止めた。


「そこまでだ。今は話すな」

 一瞬だけ、初めて交戦した時のような険しい雰囲気…空気がピリッとした。

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