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仔犬のすてっぷ

第36章 36章 これから先は・・・


『いま、ここでその話はするな。俺の本当の目的や俺の正体は秘密事項なんだ。
警察連中に知られると俺の目的を果たすのが難しくなっちっまうじゃねえか!』


 ……つまり、本当の正体は話していないってことだね……。

・・・ん?


今、頭の中に直に話しかけてきた?!


『俺の能力は一度発現すると持続力が長くてな。あと2〜3日はコレが出来る。ただ、俺から一方的にお前らにアクセスしなきゃならん分消耗は激しい』

…なんだか随分ご都合主義な能力だなぁ…。


「それで、トーマスさん。この子達が霧矢に襲われていた被害者ということでよろしい?」

 側にいる刑事のお姉さんが朗らかな笑顔でそう聞くと、トーマスさんは「そうだ」と短く答えた。


「そこのちっこい坊やとノッポの坊やをアパートで襲ったのも、霧矢の部下が手を回して行った事さ。なんでもそこのちっこい方のが霧矢が人を襲うトコロを見ちまったらしい。アイツがそう言ってるのを俺は聞いたからな」
『いいか、お前ら?俺に合わせて会話しろ。そうすりゃ今回関わったあの姫様もひどい目に合わされた嬢ちゃんも坊主の仲間も坊やの上司も上手く被害者ってことに出来るからな?』

 刑事さんと話をしている横からトーマスの声が入り込んできてそう諭してくる。

……そうか。
この人はこのためにここに来たんだ。
僕ら皆をかばうために。


『オッサン…随分気の利いたことするじゃねえか……ありがとよ』

 蒼空も小さくため息をついた後、トーマスの顔を見てから小さく会釈して見せる。

 彼も少し、トーマスを信頼したのかもしれない。
その証拠にさっき彼を見たときとは違い、多少だけれど険の取れた顔つきになっていた。


『…お?大人になったか?それでいい。なんでもかんでもつっかかってるようじゃあいつまでも子供だからな』

 トーマスさんがニヤニヤしながら蒼空を見て、蒼空はトーマスさんに苦虫を噛んだ幼な顔をしながら愛想笑いをする。
 そんな様子を女性警察官は不思議そうな顔で見ているけれど、彼らがどうしてそんな表情をするのかは分かるはずはなかった。


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