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この夏、君に溺れた

第4章 朝も昼も夜も

その日は朝から、先生の視線が違った。

「何ですか?」

思いきって聞いた私に、先生は頭を掻きながら聞いてきた。

「ああ、いや、その……塾に行かないのかなって、思って……」

例えて言うならば、母親と再婚した若い男性が、父親になろうと奮闘、もしくは気を使っているみたいだ。

「今日は日曜日なんで、お休みです。」

「塾が休み!?」

なぜ、そんなに驚くのか。

先生は面白いくらいに、おどおどし始めた。

「……何かまずいことでも?」

「いや!」

力強く否定した割には、悩む姿が半端ない。


私はちらっと、部屋の中にあるゴミ箱を見た。

書き損じた原稿用紙が、山のように積み重なっている。

おそらく、締め切りを前にして、話が進んでないのだろう。

そんな時に、人がいたら余計に気が散る。

勉強と一緒だ。


「……ああ、私、別な部屋で勉強してますよ。」

そう言って私は、寝室に移動した。

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