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身代わりの妹が懐妊発覚して、そのまま皇帝の妻になりました

第5章 後宮妃に選ばれた

 なんとか話をつけて、琴音は後宮妃に選ばれたのだ。
 お腹の子は順調に育っている。
 後宮の秀進の侍女達からは、あまり__というか、かなり歓迎はされていない。
 中には嫌がらせをしてくる侍女もいるのだ。

(姉さんを恨むけど仕方ないよね。だって、姉さんの我が儘が招いた事なんだから)
 琴音はため息をつく。
 秀進は、朝から夜遅くまで忙しそうにしていて、帰りたいとは言い出せずにいる。
 物思いにふけていると、ベテラン世話係の幸蘭(こうらん)が部屋に入ってきた。
 彼女だけは、琴音の味方のような存在で、事情を知っても普通荷接してくる。
「貴女も不運な星に生まれたとは言え、秀進様のお子を身篭ったのだから、我々は本当は期待しています。私からキツク叱っておきますよ。それより、温かいミルクでも飲んで、心を穏やかになさってくださいませ」
 そう言って、盆に乗せてきた湯呑み茶碗を琴音に差し出した。
「ありがとうございます。迷ってるのです。歓迎されていないなら、実家に戻るかどこか遠くへ逃げて一人で育てようかどうしようか……」
 フーフー冷ましながら入れてくれた温かいミルクを、琴音はゆっくりと飲んで一息ついた。
「秀進様は忙しい身なので、なかなか相談ができずにいるのですね。私は、見ての通りのおばばでございますから、人生経験は長いほうです。これでも、子を二人授かった経験もあるのですよ。初めての妊娠は不安がありますよね。しかも、環境ががらりと変わってしまっては、故郷が恋しくもなります。私でよければ、お話を聞きましょう」
 幸蘭は、琴音の背中をぽん、ぽんと優しく撫でた。
「幸蘭さん、二人も子供がいるのですか? それは、ここへ来る前の話ですよね?」
「亡き旦那様の秘密の子供たちですが……ここの後宮に仕える前の若かりし頃の……とか言うものです。若い時に、色々と経験を積むと後から役に立ちます。良くも悪くも……秀進様がお仕事がないときに、胸の内を吐き出したらどうです?」
 琴音が飲み終えた空の湯呑み茶碗を受け取り、盆に乗せるとスッと立ち上がった。
「考えてみます。美味しかったです。ごちそうさまでした」
「いいえ、力添えができませんですみません。では失礼します」
 会釈をして部屋から出て行った。
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